世の中のイメージを利用した5人旅

嵐を呼ぶ5人と違って、カメラの前でわちゃわちゃするわけでもない。だから5人は仲が悪いと思われている。

だからこそ、リーダーはそれを「利用したい」と思ったのだろう。

だからこそ今、5人だけの「旅」を見せるべきだと思ったのだろう。

マネージャーはもちろん、スタッフすらいないように見える、5人だけの旅。

会議で黒林さんがリーダーの意見をみんなに伝えた。だけど僕を含めてスタッフは、黒林さんが言ったリーダーの提案に「すぐにやりましょう」とはならなかった。

強いゲストを入れなければ勝てないと思いこんでいた。今、5人だけで旅をやったとしても、それは求められてないんじゃないか。

嵐を呼ぶ5人の人気はさらに上がっていき、裏番組の勢いが増していく中で、5人だけの旅をやったとしても、「視聴率は取れないんじゃないか」。そう僕は思っていた。

ゲストではなくメンバーを「信じる」

その日のあと、5人旅が議題に上がることはなくなった。

会議では「どんなおもしろいことをしようか?」ではなく「どのゲストを呼ぼうか?」ばかりに頭が行っていた。

リーダーが、タクヤがゴロウチャンが、ツヨシがシンゴがどうやったらおもしろく見えるか、輝いて見えるかではなく、どのゲストを呼んだら視聴率が取れるかばかり考えて焦る。

どんなに豪華な人がうちの番組に出ていたとしても、裏番組に出る人のほうが輝いているように見える。

完全に、ゲストに麻痺していた。

春の2時間スペシャルの中身を考えている時だった。またいつものようにスペシャルにふさわしいゲスト企画を考えていると、演出の野口が言った。

「前にリーダーが言っていた、5人の旅やりませんか?」

歩道を歩く5人の若者の足と影
写真=iStock.com/AlexLinch
※写真はイメージです

野口なりに信念を持って言った言葉なのが分かった。

「ゲストじゃなくて、5人を信じて作りませんか?」

野口がそこまで自分の思いを伝えることは珍しかった。演出として、自分で考えてそこに至ったのだろう。