夏ドラマが始まって1カ月が経過し、各ドラマの成否が見えてきた。ネット上では「苦戦」「不調」「爆死」と酷評される作品もあるが、その多くは、視聴率の中の「世帯」や「個人」での判断だ。年齢を細かく区切った「特定層別」で見ると、むしろ人気があり、見逃しサービスで多く視聴され、ビジネスとして合格点をとっているものもある。
ドラマ視聴の中心層となることが多い中高年層だけでなく、この特定層の視聴率(当初1カ月平均)で主要ドラマ14作品を再評価してみると、意外なことがわかった。
テレビを見る時間が長い「中高年」の視聴率は全体を映していない
ドラマが高視聴率を獲得できるかどうかは「中高年」の動向がその鍵を握るケースが多い。テレビをリアルタイム視聴する人は、50歳以上が6割ほどを占め、このボリューム層の数字が「世帯」や「個人」の視聴率を左右するからだ。
ここ1カ月での「個人全体」(全年代)のベスト7は下記のドラマだった。
1位 TBS「ブラックペアン シーズン2」(日曜21時)
2位 フジテレビ「海のはじまり」(月曜21時)
3位 TBS「西園寺さんは家事をしない」(火曜22時)
4位 テレビ朝日「科捜研の女 season24」(水曜21時)
5位 フジ「新宿野戦病院」(水曜22時)
6位 テレ朝「スカイキャッスル」(木曜21時)
7位 日本テレビ「GO HOME」(土曜21時)
(13位)フジ「ビリオン×スクール」(金曜21時)
では、「個人全体」以外で細かく見るとどうか。例えば、「65歳以上」の視聴率だ。
彼らがよく見るベスト5の作品のうち3本までは「個人全体」でもベスト5に入り、残り2本も7位までに滑り込んだ。1日のテレビ視聴時間が若者より数倍長く、個人全体に大きな影響を及ぼしていることがわかる。
●「ブラックペアン シーズン2」
「65歳以上」の人が夏ドラマで最も好んだのは「個人全体」1位でもある二宮和也主演のTBS「ブラックペアン シーズン2」だ。同2位である人気グループ「Snow Man」の目黒蓮が主演のフジテレビ「海のはじまり」の1.6倍以上となった。しかも、同作品は「コア層」「Z世代」「F1」(女性20~34歳)「女子中高生」など、多くの層でもぶっちぎりのトップだった。
ところが、この「ブラックペアン」は「小学生」(男・女)ではいずれも3位に後退し、「小学生の親世代」でも頂点を逃している。どうやら小学生のテレビ視聴は、他の世代、特に「65歳以上」と極端に異なるようだ。つまり、視聴率の傾向を示す報道(=中高年の動向が大きく反映される数字)には落とし穴があることがわかる。