※本稿は、大住力『どんな人も活躍できる ディズニーのしくみ大全』(あさ出版)の一部を再編集したものです。
ウォルト・ディズニーが考える「あいさつとは何か」
ウォルト・ディズニーは、コミュニケーションをとても大切にしていました。
ある人が彼に「あいさつとは何ですか?」と聞いたところ、彼は「『あいさつ』っていうのは、頭を下げ、声を出すことではなく、“気持ちを伝える”コミュニケーション」と答えたといいます。
また、ある人が彼に「仕事とは何ですか?」と聞くと、彼は「『仕事』っていうのは、相手の気持ちをどう動かし、どう行動を変えるかというコミュニケーション」と言ったそうです。
彼にとってコミュニケーションとは、単に「話す」や「互いに理解する」ことではなく、それを超えて相手の心を動かし、相手の行動を変えるエネルギーそのものなのです。
今、世の中のコミュニケーションの在り方は大きく変わってきています。紙の資料から、データで情報を共有するようになった職場も多いでしょう。また、メール以外の、チャット、SNSなどの手段で連絡をとるようにもなりました。
しかし時代が変わっても、ウォルト・ディズニーが大事にしていたFace to Faceのコミュニケーションは必要だと私は考えています。
ディズニーの会話の基本は「聞く」ことにある
ディズニーには、そもそもコミュニケーションの基本は話すことより聞くことという考え方があります。メンバーと信頼関係を築くためには、「聞く」に重点を置き、会話をストロークにしていくのがポイントです。
ストロークとは、相手の話を軸に話を展開して、会話を増やしていく方法です。相手を話の中心に置き、相手が自分でアクションを起こせるようにしていきます。
ストロークの会話には多少慣れが必要です。次の5ステップを繰り返してコツをつかんでください。ここでは、メンバーが自分から話をしてきた場合の会話の展開法を説明します。(図表1)
【ステップ1】話したいことをすべて話させる
相手が話を始めたときは、相手の目に視線を合わせ、途中で口を出さずに、うなずきながら聞きます。はじめは、話したいことをすべて話してもらいます。
声に出して相づちを打ってもらったほうが話しやすい人もいるので、そこは相手を見ながら変えていきましょう。
【ステップ2】相手の話にリアクションをする
相手の話を一通り聞き終えたところで、こちらも「そうなんですね」「初めて聞きました」などと言葉を返します。ここでは、相手の話を否定も肯定もせず、相手の言葉を真摯に受け止めます。
【ステップ3】相手の言いたそうなことを言葉にして返す
話の中から相手の言いたいことを予測し、「あなたは**したいのですね」とこちらが言葉にして伝えます。
これで共感の気持ちが相手に伝わり、相手は「自分の話をちゃんと聞いてくれた」ということを認識します。こちらの解釈が間違っていた場合は、事実や気持ちを確認していきます。
【ステップ4】「次の行動」を具体化する
相手に話をさせて、思いやアイデアを引き出すだけでは仕事は進みません。次は、相手の視点を未来の方向に変え、具体的な行動ができるように導いていきます。
たとえば、メンバーからの提案に対しては、リーダーが「あなたの結論としては、新しい業界にも営業の販路を広げたいということですね?」と確認しながら、そこから1つひとつ、「今メンバーができること」を言葉にしていきます。
【ステップ5】相手の行動を褒めて終わる
最後は「このアクションでどんな結果が出るかはわかりませんが、やってみる価値は大きいと思います。主体的な意見をありがとう」のように、相手の仕事ぶりや考え方、行動力を具体的に褒め、応援する姿勢を見せて会話を終わります。