人生100年時代と言われるいま、60歳からでも資産運用が可能な期間は30~40年ある。Money&You代表取締役でマネーコンサルタントの頼藤太希さんは「60歳から投資を始めても決して遅くない。新NISAを活用し資産を効率よく増やしながら、自分の寿命に向けて資産をうまく使い切っていく戦略が重要になる」という――。
貯金箱とつえをついた人の形をしたオブジェ
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結局のところ、老後資金はいくらあれば安心か?

老後の生活に対する不安の多くはお金に関するものです。確かに、お金が底をついて生活が成り立たなくなるようでは怖いですよね。では、老後資金はいくらあったら安心できるのでしょうか。

以前大きな話題になったのが、いわゆる「老後資金2000万円不足問題」です。

2019年6月に金融庁の市場ワーキング・グループが公表した「高齢社会における資産形成・管理」という報告書に「夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦無職世帯」では収入と支出の差が約5万5000円あるので、老後の人生が30年だとすれば、「不足額の総額は単純計算で2000万円になる」と大きく報じられたのです。

老後不安を過度に煽られた形になりましたが、真実は、その報告書にあった世帯は、取り崩せる資産があるので約5万5000円を生活に充てていたというだけなのです。資産が少ないのであれば、支出を抑えるでしょうから、年金収入だけで生活できないわけではありません。

老後の必要資金は2000万円から1370万円へ減少⁉

なお、この報告書が元にしている家計調査の数字は2017年のものです。

2017年時点の家計調査で「夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦無職世帯」の収入は20万9000円でした。それが2023年時点での家計調査では「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」の収入が年24万5000円に増えています。

アンケートを取っているサンプルデータの問題もあるかもしれませんが、年金収入が増えている要因は、専業主婦(夫)世帯が減り、共働き世帯が増えていることが影響している可能性が高いでしょう。

その結果、収入と支出の差が3万8000円と縮小されています。先の報告書と同じように老後資金を計算すれば、30年で「1370万円」となりますので、少なくなりました。

では「2000万円」ではなく「1370万円」を誰もが用意しておけば安心なのかといえば、そうではなく、あくまで平均データの結果です。毎年数字も変わります。そもそも、人により老後に必要な金額は異なってくるはずです。