日本にマンションが本格的に登場して50年以上が経過、建築後の経過年数が長くなった物件では、建物、所有者の「ふたつの高齢化」が進行、維持管理状態の悪い物件のなかには、幽霊マンション化するケースがみられるようになってきた。住宅ジャーナリストの山下和之氏は「そうならないように管理組合の活動を活発化して、維持管理に努める必要があるが、それが難しければ早めに売却するのが現実的かもしれない」という――。
アパートと青空
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築50年以上でも3億円台で取引されている物件も

マンションは築年数が長くなるほど、建物の傷みが目立つようになるのは仕方のないことではある。しかし、定期的に大規模修繕を行って、日常的な維持管理が徹底していれば、老朽化のスピードを抑制、新築時に近い状態を長く維持できるようになる。数は少ないが、そんな例もある。

日本のヴィンテージマンションの代名詞ともいわれる「広尾ガーデンヒルズ」は1987年に全体竣工しゅんこうを迎えたが、住棟によっては1983年竣工もあって、築40年以上が経過している。

それでも、計画的に大規模修繕が実施され、維持管理も充実しているので、外観に傷みはほとんどみられず、植栽なども適切に管理され、快適な住環境が維持されている。そのため、分譲時価格より高い価格、2億円、3億円で取引される住戸があり、賃貸化した住戸のなかには、月額賃料が100万円以上の物件も少なくない。

また、三井不動産の最高級ブランドであるパークマンションの先駆けである「三田綱町パークマンション」は1971年の竣工ながら、現在も純白の美しい外観が維持され、分譲時価格を上回る2億円台、3億円台などで取引されている。

所有者の多くが年金生活の高齢者に

しかし、こうしたヴィンテージ化したマンションは極めて稀なケース。多くは、経過年数とともに、建物、居住者双方の「ふたつの高齢化」が進行して、管理が行き届かず、計画的な修繕も行えず、居住性や資産価値が低下してしまうことなる。

その最大の要因が、所有者、居住者の高齢化にあるのは間違いない。

国土交通省では、5年に1度、全国のマンションを対象に大規模な調査を実施しているが、その最新版である「令和5年度マンション総合調査」によると、図表1にあるように、築40年が経過した1984年以前竣工のマンションでは、世帯主が70歳以上とする割合が55.9%に達している。築30年から40年のマンションでは60歳代以上が69.0%とほぼ7割に達している。

多くの人がリタイアして年金生活に入っているわけだ。むろん、年金生活者でも多くの資産を持ち、ゆとりのある生活を送っている人もいるだろうが、そうでない人も多いのではないだろうか。

【図表】完成年次帯別の世帯主の年齢