どんなに善意ある接触でも島民の迷惑になるだけ
それに、今後すぐに何か新しい発見が得られるとも思えない。パンディットは成功したが、2004年のインド洋大津波の直後、島民の安否確認のために島へ向かった遠征隊が体験したように、現代世界との接触は島民の敵意を呼び起こした(訳注:2004年のスマトラ島沖地震とその後の津波で、北センチネルは大きな被害を受けたと見られる。安否確認のために島に接近したヘリコプターに、島民は弓矢で攻撃をしかけてきた)。
この島の住民がたくましく、よそ者の助けを必要としていないのは明らかだった。事実、2005年以降のアンダマン・ニコバル諸島政府の無干渉政策に後押しされて、このコミュニティが数千年間孤立状態で存続したことと、インフルエンザなど私たちにはありふれた病気が深刻な被害を与えることを考えれば、どんなに善意ある接触であっても島民の迷惑になるだけだ、というのが現在の多数意見になっている。
これまで世界の多くの原注民が入植者に土地を追われ、外界との接触によってアルコール中毒や糖尿病に苦しめられてきた。それを考えると、この(不)活動が最も賢明な方針であるのかもしれない。
侵入者が酒やタバコや病気を残していくことも少なくない
なおアンダマン諸島では、過去2世紀にわたる部外者との継続的な接触によって原住民の人口が著しく減少している。これはいまなお大きな問題として残っている。
たとえば、ツーリズムは現代の娯楽として深く根づいているが、強い懸念を寄せられることがあり、なかでも当該地域のほかの場所で行われている“ヒューマン・サファリ”は近年激しい議論を巻き起こした。
北センチネル島から近い南アンダマン島と中アンダマン島のジャラワ族の被害は特に深刻だ。ジャラワ族は、足を骨折したコミュニティの若者が1990年代にインドの村の近代的な病院で治療を受けたあと、何世紀も続けてきた孤立の方針をわずかに緩めた。
それにつけこむように、旅行会社は現在、ジャラワ族の居住地域を車で通過するツアーの宣伝を行っている。それはまるで希少動物を探す旅のようであり、ジャラワ族の生存に欠かせない動物に害を与える可能性がある。
さらに、侵入者が地元の木材や野生動物の肉を盗んだり、酒やタバコや病気をあとに残していくことも少なくない。