猫背は決して“悪い姿勢”ではない

はじめに、良い姿勢の反対、悪い姿勢の代表格「猫背」について考えていきます。猫背で悩んでいる人は非常に多くいますね。しかし、猫背が悪いとは一概には言い切れません。もともと体質的に猫背気味だという人も、実はいるのです。

日本の代表的な整体技法である野口整体に、「体癖」という考え方があります。体癖では、体格や身体の動きの偏り、内臓の働き方の傾向から10の要素を抽出し、姿勢バランスの取り方を把握するスケールとしながら、姿勢バランスを見ます。「正しい」姿勢に矯正しようとせず、むしろ人それぞれの「癖」に沿って施術していくのが理想です。

その中の特定の人たちにとっては、猫背は個性のひとつ。特別悪いことではありません。

また、一時的に猫背になることは誰にでもあります。

たとえば、緊張する打ち合わせが終わってデスクに戻り、お茶を飲みながらホッとひと息ついている時、休日に好きな動画を観ながらダラダラしている時。猫背になるのは、ごく自然なことです。

「子どもが家でリラックスして猫背」は静観を

子どもが家でリラックスして、ゲームをしている時も同じです。

猫背になっている子どもを見ると、親は「姿勢が悪いよ」と指摘しがちですが、本人としては、学校での緊張がほぐれて脱力しているだけ。学校で集中している時はシャキッとしているものなので、「今はオフなんだな」と静観していればいいのです。

このように、人間という生き物の特徴として誰でも、オンの時は身体を緊張させ、オフの時は気が抜けてダラッとなる。そう理解していれば、猫背を直さなければと思い込む必要はないというわけです。

とはいえ、猫背では見栄えが悪いからどうにかしたいと思う人もいるでしょう。

確かに背筋がピシッと伸びていれば、見た目は美しいかもしれません。しかしそれは、身心にとって本当の意味で良い姿勢とは言えません。

実際、無理に背筋を伸ばしたり道具を使って矯正しようとしたりしても、猫背になんらかの必然性があれば、すぐ元に戻るだけです。

身心が整い、場面に応じて適度な緊張を保ち、それが終わったら、ほどよくゆるむ。そういったサイクルで生活できるようになれば、その人らしい姿勢になります。周囲から見ても、その姿がもっとも魅力的に映るのではないでしょうか。

勉強中にスマホを見ている小学生の男の子
写真=iStock.com/TATSUSHI TAKADA
※写真はイメージです