燃えカスで変色やシミが発生

飛散した花火の燃えカスは、同市観光振興課の職員によると、毎年、花火大会後はボランティアや市の職員らが清掃活動を行ってきた。だが、昨年の花火大会では断続的に雨が降った。水分を含んだ花火カスが車やソーラーパネルの表面に密着し、火薬由来とみられる成分が染み出し、変色やシミをつくってしまったのだという。

「『洗ってもとれない』という苦情が市に寄せられました」(観光振興課の職員)

花火の打ち上げ場所は川沿いの「撫養(むや)川親水公園」の近くで、周辺には住宅地が広がる。

「ソーラーパネルを設置する家屋が増えました。屋根の上を覆う対策も難しい。花火大会を見直す時期にきていると思います」(同)

市や商工会議所などは、25年度以降の開催を目指して、打ち上げ場所の変更や規模の縮小を検討していくという。

燃えカスが車上やソーラーパネルに落下

「関東三大七夕まつり」の一つ、「狭山市入間川七夕まつり」(埼玉県)の花火大会も今年は中止になった。理由の一つがやはり、花火の燃えカス。祭りの実行委員会の事務局である狭山市商業観光課の担当者は言う。

「以前から燃えカスの課題はあり、昨年は打ち上げ場所を700メートルほど移動したのですが、また苦情が寄せられました」

燃えカスがカーポートの屋根や車上、ソーラーパネルなどに落下、汚れたという。狭山市でも、燃えカス問題も含め、花火大会全体を見直していくという。

花火大会は減ってしまうの?

花火を打ち上げれば、発生する花火の燃えカスのために、愛車や家屋に傷がつくのは確かに問題だろう。このまま、花火大会は減っていってしまうのか。

日本煙火協会に問い合わせてみた。

国内外で多くの花火大会を手掛けてきた河野晴行専務理事は、相次ぐ花火大会の中止について、「複合的な要因が絡んでいて、燃えカスだけが理由とは一概には言えないでしょう」と語る。

なぜいま「燃えカス」が問題に?

「花火の燃えカス問題は昭和の時代からありました。なぜ今年、花火大会がこの問題で中止が相次いでいるのか、わかりません。花火の構造や打ち上げ方法が変わったわけでもありません」(河野専務理事)

確かに、打ち上げ場所の近くに大きな駐車場やヨットハーバーがあると問題が拡大しやすいので、協会はこれまでも大会主催者に注意を呼びかけてきた。だからこそ、首を傾げる。

「もし、花火の燃えカスのみの問題で花火が打ち上げられないのであれば、東京の人口密集地で開催される『隅田川花火大会』は大問題になっているはずです」(同)

河野専務理事は、「開催地の住民感情が関係しているのでは」と推察する。

取材に、「4年ぶりの花火大会で住民の意識が少し変化したのかもしれない」と、話す自治体の職員もいた。

「毎年、花火大会が開催されていたころは、燃えカスが降ってきても、『いつものことだから』で済んでいたのかもしれません。コロナ禍の4年をはさみ、昨年は久々の開催だった。降ってきた『燃えカス』に改めてストレスを感じたかもしれません」(ある自治体職員)

夏の花火は、老若男女を問わず楽しむことのできるイベントのひとつだ。

どの職員も、「市民の期待が大きくて、花火大会はやりたいのですけれど」と、残念そうに訴えていたのが印象に残った。

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

当記事は「AERA dot.」からの転載記事です。AERA dot.は『AERA』『週刊朝日』に掲載された話題を、分かりやすくまとめた記事をメインコンテンツにしています。元記事はこちら
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