「ボートやヨットにはさまざまな付属品があり、完全に全体を覆うことは難しい。昨年はシートのすき間から燃えカスが入ってしまった」(同課の石崎博課長補佐)

燃えカスで、計7隻の船に焼け焦げが生じた。高価な船だと1隻数千万円もするため補償額がふくらみ、最終的に修理代として計1200万円が加入していたイベント保険から支払われた。

「過去にも花火の燃えカスによる被害はありましたが、昨年ほど大きな被害ははじめてでした」(石崎課長補佐)

港内での打ち上げ地点変更は難しい

花火大会の開催見送りは、実行委員会が「燃えカス」対策の検討を重ねた結果だ。

四方にある建物やボートパークは保安距離に入らないギリギリにあり、港内での花火の打ち上げ地点は変更できそうになかった。周辺のボートやヨットの防炎対策を徹底すると、持ち主が船を使用できない期間がこれまで最長だった10日間よりも延びてしまい、「私有財産にそこまで制限をかけるのは難しい」(同)。

船の移動を依頼することも考えたが、係留場所の確保は簡単ではなく、乗用車が駐車場を移動するようにはできない。

「船の所有者の皆さんが、『焦げても弁償してくれればいいから、花火大会を続けていいよ』とおっしゃってくださったとしても、被害を重く受け止めている我々としては、同じ被害を繰り返すわけにはいかない」(同)

被害が繰り返し発生すれば、イベント保険の保険料は上がることも考えられる。

新たな会場も探したが、意見調整や計画策定の時間が十分になく、今年度の花火大会開催を見送らざるを得なかった。

「花火大会を楽しみにしている方が多くいらっしゃり、苦渋の選択でした。次年度以降、持続可能な花火大会にするため、検討を重ねていくことといたしました」(同)

鳴門市の花火大会も中止

徳島県で最大級の「鳴門市納涼花火大会」も、燃えカス問題で今年の開催は中止になった。4年ぶりの開催となった昨年は、約7000発が打ち上げられ、5万5000人を魅了した。

ここでも花火の燃えカスが、車や屋根の上に設けられた太陽光発電のソーラーパネルに落下、燃えカス被害が発生した。