論文や党員の推薦書、研修も必要
6月30日、中国共産党は、23年末に党員数が約9918万人に達したと発表。24年中に1億人を突破することも明らかになった。人口14億人に占める党員の割合も7%にまで上昇しており、人気が高い。
だが、誰でも望めば共産党員になれるか、といえば、そうではない。筆者はこれまで何度か、党員にインタビューしたことがある。いずれも30代~50代の在日中国人だったが、彼らによれば、党員になる=エリートの証であり、中国では悪いイメージはないどころか、以前から「とてもいいイメージ」だったという。30代後半の女性は、大学在学時に先生から推薦され、党員を目指したという。当時、それはとても名誉なことで、「推薦されて、とても誇らしい気持ちでした」と語っていた。
党員資格を得られるのは18歳以上で、中国の数え年で高校2年から入党できるが、実際には大学入学後という人が多い。成績優秀者の場合、たいてい先生からの声かけがあり、自身も望むなら入党申請書、論文、党員の推薦書などの書類を揃えて党に提出。審査を経て、まず予備党員になる。1年ほど研修を積み、党規約などを勉強して、問題がなければ、正式に党員になる、というのが一般的な流れだ。
習近平政権への忠誠ではない“切実な本音”
その女性は大学時代に党員になったが、当時は1学年で数人だけしか党員になれず、「党員になったら、国有企業や有名企業への就職がほぼ約束されているようなもの。いわば、党からのお墨付きを得られたということです。家族にとってもとても喜ばしいことであり、鼻が高かった。友だちからも羨ましがられた」と語っていた。
昨今の就職難により、党員になりたい人はどんどん増えており、それが1億人に迫る党員数の増加にも表れている。別の在日中国人の党員によれば「かつてに比べれば、そこまで狭き門ではなくなった。中くらいの成績では党員にはなれないが、ある程度優秀であれば、党員になることができ、就職や結婚にも有利に働く。自分のスペックをひとつでも増やしておきたい、という気持ちの人も増えているのではないかと思います」と語っていた。
ナショナリズムの高まりによって、共産党愛が芽生え、党員になるという人も中にはいるかもしれない。だが、若者たちが党員になりたいと望む背景には、習近平政権への支持や愛党精神よりも、自身の「スペックづくり」「就職に有利」という現実的な理由、本音が隠れているのかもしれない。