日本のアニメは海外でどのように見られているのか。エンタメ社会学者の中山淳雄さんは「『鬼滅の刃』の人気がすごい。2021年ごろに人気のピークをむかえたと思っていたが、最新作で盛り返した。もはや日本エンタメ界全体を牽引する作品だ」という――。
「『鬼滅の刃』吾峠呼世晴画集―幾星霜―」(手前)と、2冊の塗り絵帳=2021年5月
写真=共同通信社
「『鬼滅の刃』吾峠呼世晴画集―幾星霜―」(手前)と、2冊の塗り絵帳=2021年5月

人気作品が目白押しだった2024年春で最も評価を得たアニメ

世界中にいるアニメファン約2000万人が集う「My Anime List(以下MAL)」は、アニメ好きのためのWikipediaのような存在だ。

3カ月ごとに60~70本放送される新作アニメのページが新設され、Members(アニメをリストインしている人)、Score(アニメ評価)、Popularity(Members数の歴代ランキング)、Ranked(Scoreの歴代ランキング)の4つがトップに表示される。当然海外のアニメファンのためのサイトであり、すべて英語。

ここはエンタメを研究する私のような立場の人間にとって宝の山だ。6~7割が10~20代の若者世代、5~6割が欧米ユーザー、あとはアジア・南米などで日本人はほんの1%未満、という純粋な「日本人以外のアニメファン」サイトだ。

ネットフリックスや海外における最大級のアニメ配信サイト・クランチロールによって世界中に配信されたアニメをどう受け止めているかのリアリティが、ここにある。

2024年春(4~6月)は長期・大型シリーズがそろい踏みした時期であった。

すでに5期目となった『鬼滅の刃』を筆頭に、『この素晴らしい世界に祝福を!(このすば)』や『転生したらスライムだった件(転スラ)』、『魔法科高校の劣等生(魔法科)』が第3期、『無職転生 II ~異世界行ったら本気だす~』『魔王学院の不適合者 II ~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~(まおがく)』はともには第2期第2クール、『デート・ア・ライブ』は5期で、『僕のヒーローアカデミア』に至っては第7期である。

マンガ・ノベルの連載は10年以上、アニメだけでも5~10年といった単位で続いてきた“大御所”作品ばかりだ。

特にラノベ界においては15年前からの殿堂入り作品がこれでもかというほどに折り重なっている。「鬼滅」「このすば」「転スラ」「魔法科」「まおがく」「ヒロアカ」などアニメ開始前の時点ですでにMALの登録者10万人超えの作品が7本あり、新興には不利なタイミングでもある。