世界最大級の映画・ドラマ情報サイトで最高得点

この8話は米国の映像レビューサイトIMDbでのスコアで9.9という最高得点をたたき出している。それまでの1~7話目のほとんどが7点台なのに!(スコアはすべて執筆時のもの)

「傑作」「アニメ世界の金字塔」「完全に思考をどこかに持っていかれた。思わず言葉を失った」「これこそが“映画”だ」「3作仕立ての映画が待ちきれない」。

日本のテレビアニメ、映画作品に対して、これほどの賛辞が並ぶことはかなり珍しい。IMDbは日本アニメ好きが集まるMALとも違い、あくまで欧米映画も横並びで比較される「一般映像レビューサイト」である。そこで1000人以上がレビューを残し、星9.9という最高評価を得られたということは、記録に残すべきことだろう。

IMDbでの評価トップ作品は『Breaking Bad』(2008~13年、220万人が星9.5)や『Band of Brothers』(2001年、53万人が星9.4)。

過去の日本作でいえば『鋼の錬金術師』(2009~10、20万人が星9.1)が16位、『進撃の巨人』(2013~23年、53万人が星9.1)が23位。ほかにも『HUNTER×HUNTER』が34位、『ONE PIECE』が61位と並んでいる。これらの作品のなかでも、「星9.9」というのは一度もなかった快挙なのだ。

これは少年ジャンプにおけるマンガ原作としてではなく、あくまで「映像作品としてのアニメのコンペティション」だ。にもかかわらず、『鬼滅の刃』を制作したufotableは数々の成果を残してきた。

「立志編」19話(蜘蛛の鬼・累との闘い)、「無限列車編」最終話と「遊郭編」最終話が星9.7、「刀鍛冶の里編」最終話が星9.4だったことを前提にすると、今回の“お館様”の最後のシーンと無限城にいざなわれる最終話がいかに歴史的傑作として海外で受け止められたかということが理解できる。

誰もが知っているアニメを続ける難しさ

2020~2021年のブームがあまりに巨大だった『鬼滅の刃』にとって、その後10年をかけたアニメ化というのは非常に難しいチャレンジだったと言える。

新しいものに目移りする人々に対し、いかに知られつくしたストーリーとキャラクターを「アニメの表現」で説得力をもたせるかという勝負だった。

MALを見てみると、第4期「刀鍛冶の里」編や今回の第5期「柱稽古」編では徐々に登録者数も減っており、実際に「柱稽古」の39万人は、第1期「立志編」の44万人も割り込んでしまっている。

【図表2】『鬼滅の刃』各シリーズのMALメンバー数変化
筆者作成

各エピソード別スコアでみれば、結局アニメとしても最も海外に伝わる部分は「バトルの終局面と感情の爆発」であり、やはりコミカルな表現や世界観の深みなどではない。

だから「ONE PIECE」や「HUNTER×HUNTER」、「進撃の巨人」といったバトル中心のアニメ作品がヒットする傾向が強いのだ。

あとはそのハイライトとなる部分にいかに技術の粋を集め、ほとんどが人件費といわれるアニメ制作の世界で「制作費」という資本をかけられるか。