暴行や窃盗の多発に公安部隊出動

水害発生から2カ月以上たった現在、住民約133万人を擁するポルトアレグレでは都市機能回復に向けた取り組みが着々と進められている。しかし内陸の多くの自治体の復興は遅々として進んでいない。6月中旬に大手新聞社が行った調査によると、アンケートに答えた各地住民の半数以上が「州の再建に3年以上かかる」と、復興のスピードに対して悲観的だ。

行政の災害対策の不備に加えて、さまざまな事件による混乱が復興をより難しくしている。

避難所では未成年に対する複数件の性的暴行が発生し、空き巣泥棒は水害発生から約1カ月間で逮捕者100人を超えた。救援物資の組織的窃盗も頻発し、果ては警察が市民による食糧倉庫襲撃を手助けする事件まで起きた。

こうした事態に対応すべく連邦政府は国家公安部隊を派遣した。

一方で、富裕層の多い州都では、コンドミニアムに武装した非番の警察やガードマンを配備するなど、独自の自衛策を敷いている。“みんなで復興”という意識は低い。

平常時から治安が悪く、貧富の差が著しいブラジルでは、緊急事態の発生により治安、教育、格差など国や地域社会が“蓋をしておきたい問題“が鮮明にさらけ出されるのだ。

ブラジルに足りない日本の「官民一体のエコシステム」

ジャロウィツキ氏は水害発生後、優れた災害復興システムを持つ日本を知る専門家として、多くのブラジルメディアに出演している。6月末には被災地ポルトアレグレの地元紙GZHのライブ配信で、災害対策における地域住民の主体性と官民のエコシステムの構築が急務だと説いた。

6月28日にGZH紙がライブ配信した「模範とすべき日本の災害復興活」で語ったジャロウィツキ氏
写真=©GZH
6月28日にGZH紙がライブ配信した「模範とすべき日本の災害復興活」で語ったジャロウィツキ氏

「災害時の日本人には、政府や自治体からのトップダウンの指示に従うだけでなく、地域共同体の一員として自助努力で復興に取り組む姿勢があり、いわば官と民が連携して災害対策のエコシステムを形成します。行政が地域社会の声に耳を傾け、市民が行政に協力することで、状況に応じた改善が繰り返されるのです。ブラジルでも自治体と地域社会が協力して復興に取り組む体制づくりが必要です」