70%以上の自治体が「防災予算ゼロ」

「鮪立港まちづくり百年会」はその名のとおり、100年という長期的視点に立って復興に取り組んでいる。

一方で、ブラジルには場当たり的な対応が目立ち、長期的な復興計画がまるで見られないという。

東日本大震災が発生する直前の2011年1月11日、リオデジャネイロ州で大規模な洪水と地すべりが起こった。この災害では、自然災害としてはブラジル史上最多の918人が命を落とした。

同年ブラジルでは「自然災害モニタリング・警報センター(CEMADEN)」が設立されたが、予算はわずか3年で大幅に縮小されて現在に至っている。同センターによると、ブラジル全自治体の72%では防災関係予算がないという。

「ブラジルは政策としていまだに災害リスク管理に適切な投資を行っていません。政府や自治体による対策は、災害発生後の即時的かつ短期的な取り組みばかりで、予防や長期的対策を講じることができていないのです。長期の計画が立てられないことから災害後の復興活動は持続性が伴っていないのです」とジャロウィツキ氏は自国の災害対策の状況を嘆く。

「備えあれば憂いなし」の文化の形成を

気候変動の影響で世界的に災害の数が増え、日本から被災国へ物資輸送や人員派遣を行うニュースを目にすることも増えた。そんななか、災害大国ニッポンには、長期的な視野に立った防災や復興において世界に広めるべきノウハウが豊富だ。「オモテナシ」や「モッタイナイ」のような日本文化のキーワードと同様に「備エアレバ憂イナシ」の真髄を世界に広めていくべきだろう。

5月22日:ポルトアレグレ中心街で水害後のごみ処理を行う人々
写真=Gustavo Mansur/Palácio Piratini
5月22日:ポルトアレグレ中心街で水害後のごみ処理を行う人々
同日夜間ポルトアレグレ市内は再び浸水した
写真=Gustavo Mansur/Palácio Piratini
同日夜間ポルトアレグレ市内は再び浸水した

「日本とは人々が醸成してきた文化も、地理的な環境もまるで違うので、日本の方法をそのままブラジルに導入することはできませんし、導入できたとしてもうまくいくとは限りません。ですが参考にし、応用することはできます。参考にすべき復興の事例をブラジルで発信し続けることで、気候変動が進むにもかかわらず、災害対策をないがしろにするブラジルの現状に対して警鐘を鳴らし続けたいです」

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