「自分自身にブレーキをかける」と悪循環に陥る

一方、老け込んでいく人は、「もう年なんだから海外旅行はやめよう」「食べ物も野菜中心の健康的なものにしよう」「もう若くはないのだから目立つ格好はやめておこう」というふうに何事にも用心深くなって、自分自身にブレーキをかけるようになります。

そうなると、心の自由も行動の自由もどんどん奪われてしまい、年齢通りの高齢者になってしまうのです。

少し前のことになりますが、フランスのモンペリエ大学のヤニック・ステファン博士は、1万7000人以上もの中年と高齢者を追跡調査して、「主観年齢」つまり自分が感じている年齢が、若ければ若いほど健康度がアップし、老いていくスピードがゆるやかになる、という事実を突き止めました。

一方、主観的年齢が高い人は、無意識のうちに身体的活動に制限がかかって運動するのが面倒になり、ストレスの対応力が衰えるとともに、自分の身体への関心も消極的になって、最終的には病気と縁が切れなくなるという悪循環に陥ってしまう可能性がある、というのです。

こうなると、高齢者が実年齢を意識するのは百害あって一利なし、と言っても過言ではありません。

実年齢は、シルバーサービスを利用するときくらいに思い出すことにして、それ以外はきっぱり忘れてしまいましょう。自分が感じる年齢のほうが、実年齢よりも、いまのあなた自身を表しているのです。

自分の「欲望」と正しくつき合う

日本には、高齢者に対する妙な生活規範や道徳観の押しつけがあります。

「年を取ったら派手なことは控えるべきだ」とか「欲はもたずに淡々と生きるべきだ」とか勝手に決めつけますが、何の根拠もありません。にもかかわらず、それに反するような行動をとろうものなら、「いい年をして」「年甲斐もなく」みっともない、と顰蹙ひんしゅくを買うのです。

何より問題なのは、高齢者自身も、その押しつけを自ら受け入れてしまっていることです。しかし、これは本質的に間違っています。

年とともに前頭葉の機能が落ちてきて、ただでさえ意欲が弱まってきているのですから、好き勝手にやりたいことをやったほうがいいのです。

日本の高齢女性
写真=iStock.com/kumikomini
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「いい年をして恥ずかしい」などと、やりたいことをいたずらに押さえ込んでいると、何もやる気が出なくなり、何をやってもつまらないという人間になってしまいます。

高齢になっても何ごとも楽しめる人になるか、何をしてもつまらない人になるかは、自分の「欲望」とのつき合い方にかかっているのです。