家が空き家になったら子どもたちに迷惑がかかるのか。都市計画が専門の麗澤大学工学部教授の宗健さんは「相続、相続放棄、相続土地国庫帰属制度の利用という3つの手段がある。いずれにしても残された家の固定資産税を子どもたちが払い続け、管理を続けなければならないことはない。家を残すことを過度に心配する必要はない」という――。
上空から見た住宅街
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家は残すためではなく、住むためにある

全国に空き家があふれているというイメージが社会全体に広がって、空き家は大変な社会問題だということになっている。4月に発表された「令和5年住宅・土地統計調査」(総務省統計局)には、「空き家数は900万戸と過去最多、空き家率も13.8%と過去最高」と書かれていた。

そのため、今住んでいる家を子どもたちに残しても空き家になるだけで、空き家を子どもに残すのは迷惑になるだろうから、どうしようかと考える高齢者も多いようだ。

しかし、結論を先に言えば、残した家が空き家になっても問題はない。

なぜなら、家は残すためにあるのではなく、住むためにあるからだ。今、その家で幸せに暮らしているのなら、それでいいじゃないか、残した家の処分方法はちゃんとあるから心配はいらない、ということだ。

住まいに関しては、なぜか資産価値が注目を集め、資産価値の下がらない家を買うべきだ、とか、10年ごとにマンションを買い換えるのが良い、といった言説もある。

住まいの本来の価値は「そこに住む」こと

しかし、住まいの本来の価値は、そこに住むという機能価値にある。資産価値はあくまで副次的なもので、われわれは住まいの資産価値を高めるために、そこに住んでいるわけではない。

そして、特に高齢者の場合には、そこで長く住み、人生を送ってきたという愛着や誇りといった情緒価値が大きくなる。

交通の便が悪く、近くにお店もないような場所に高齢者が住み続けるのは、この情緒価値が大きいからだ。

もちろん、子どもの幸せを考えて、自分の穏やかな生活を犠牲にして住み慣れた家を離れて、家を残さないほうがいいかもしれない、と考える親心も理解できるが、同じように子どもも親には幸せに暮らしてほしい、と思っているはずだ。

だとすれば、今、そこに住んでいることが幸せなのであればなんの問題もなく、残った家のことは残された者が考えればよい。