新NISAスタートから半年がたった。金融教育家の上原千華子さんは「新NISAは10年以上の長期的な資産形成を目的としたものだが、短期的視点で損切りしてしまう人がいる。運用成績をチェックするのは、年数回程度に我慢してほしい」という――。
スマホを操作する女性の手元
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投資初心者ほどパニック売りしてしまう

金融庁の「NISA口座の利用状況調査」によると、2024年3月末時点のNISA口座数は約2300万口座、昨年末時点から約186万口座増えました。18歳以上の成人4人に1人がNISA口座を持っている計算です。しかし、資産を増やす期待とは裏腹に、投資初心者が“損切り”をする現象が見受けられます。

なぜこのような事態が発生しているのでしょうか?

第一に、安易な情報収集が挙げられます。新NISAスタート前後は投資情報が氾濫し、情報洪水にのまれた投資初心者も多いことでしょう。金融広報中央委員会の「金融リテラシー調査(2022年)」によると、日本で金融教育を受けた人の割合はわずか7.1%。専門知識が不足している状態で、膨大な情報を選別するのは至難の業です。

結局よくわからないからとSNSのオススメ銘柄などに飛びついた結果、パニック売りをしてしまった人もいます。

新NISAは10年以上のスパンで考えるもの

次に分散投資の不足です。「初心者は長期積立・分散投資から始めましょう」と多くの専門家が推奨する中、いきなり個別株に大金を投じる人がいます。

たとえば、全世界株指数(MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス)は47カ国、2900を超える銘柄で構成されています。仮に1銘柄の価格が下がっても、他の銘柄で価格変動を抑えられる可能性があります。

一方、個別株はたった1銘柄で勝負するわけです。この1銘柄が急落してしまえば、怖くなって損切りするのも無理はありません。

短期的な利益を追求しすぎることも原因のひとつです。新NISAは長期的な資産形成を目的とした制度。そもそも10年以上のスパンで考えなければなりません。しかし、相場に一喜一憂していると冷静な判断が難しくなります。下落相場で怖くなって損切りをし、その後株価が回復すると、「損切りしたのに回復して悔しい」という状況になるのです。その裏には、今すぐ一発で儲けたいという深層心理が働いています。

行動経済学の「プロスペクト理論」によると、人は利益を得るよりも損失の苦痛のほうが2倍以上大きく感じると言われています。ただ、同じ状況でも人によって感じ方は異なります。本稿では、自分に合った投資の継続方法とメンタル維持法を紹介します。