全軽自協の新車ランキング(2024年5月)で、スズキ・スペーシアが1位となり、23カ月連続で首位だったホンダ・N-BOXが2位となる波乱があった。自動車ライターの小沢コージさんは「N-BOXの首位陥落について『シンプル&クリーン路線の失敗』と論評されているが、最大の原因はそうではないだろう」という――。

なぜホンダ・N-BOXが首位陥落したのか

ま、マジかよ……。今月半ば、不肖小沢は軽乗用車月販ランキングを見るなり目を疑いました。N-BOXが……スペーシアに負けているぜ。

その差たった578台とわずかではありますが負けは負け。小沢の記憶の限りではここ10年間、N-BOXが軽自動車販売で1位から落ちたことはほぼありません。正確には、初代N-BOXが2011年12月に発売されて以来、翌2012年度から(2014年度除く)昨2023年度まで軽自動車1位。実に11回も年間トップを獲得しているのです。

いわゆる白ナンバーの登録車を含んだ乗用車オールジャンルでも2017年度からずっと1位。厳密に言えば2020年度はトヨタヤリスに負けていますが、ヤリスは「ハッチバックのヤリス」と「SUVヤリスクロス」他の合算なので、単一ボディではN-BOXが7年連続で年度1位となります。

むろん今回は月間セールスなので年間セールスはどうなるかわかりません。ただ、今年に入って気になる動きがありました。

1月はいつも通りN-BOXが2位スペーシアを5000台以上抑えての1位だったのですが、2月はN-BOX1万6542台、スペーシア1万5066台と1500台切りの僅差。

3月は決算期でN-BOX2万360台とすごかったですが、スペーシアも1万7869台と2500台弱差でしたし、4月もN-BOX1万4947台にスペーシア1万2532台差と同様。

フルモデルチェンジしたばかりなのに

今まで軽自動車1位のN-BOXと軽2位の車種の月の月販差はラクに5000台前後はありました。確実に差は縮まっており、この5月で逆転。もしや24年通年か24年度で大逆転する可能性が出てきました。

それ以上に気になる数字があります。それは毎月の「前年累計比」です。これまた2024年に入るなり激震で、N-BOXが1月から5月まで軒並み80%台に落ちているのに対し、スペーシアはほぼ130%台で、5月はなんと141%!

2車種の前年累計比
全軽自協「軽四輪車通称名別新車販売確報」より筆者作成

どちらの車種も去年10月から11月にフルモデルチェンジした新型なのです。発売1年どころか3カ月で“旧型より売れ行きが落ちた”3代目N-BOXに対し、逆に“去年の4割増しで売れてる”新型スペーシア。これだけ勢いが違えば、逆転も当たり前と言えば当たり前なのです。

3代目N-BOXが失速した理由はなんだったのでしょうか。