最近の教育はどう変わっているのかと調べはじめた。報道やネット上の情報だけでなく、実際に公立小中学校の教壇に立つ友人らから話も聞いた。習熟度別クラスの導入など変わった点もあるが、基本的に決まった範囲を先生が教え、知識の暗記や正解にいかに早くたどり着くかが重視されていると感じた。

「30年前に自分が受けた教育とほとんど変わらないじゃないか。今の実社会で必要とされる能力は育てられない」

実際に海外移住を考えはじめたのは2020年の秋頃だった。お笑い芸人で人気YouTuberの中田敦彦さんがシンガポール移住を公表していた。刺激を受けた妻から「海外に移住しない?」と提案を受けた。

「我が家の教育方針を考えると海外移住もいいかも」と前向きに調べはじめた。

決め手は教育の選択肢の多さ

日本のインターも検討はしたが、小学校から高校まで続けて通える学校が少ないことや、入学時点で子どもの英語力が問われることなどから候補から外した。

行き先は早々にマレーシアに絞った。最大の理由は教育の選択肢が多いことだ。首都に多くのインターがあり、英国式や米国式、国際バカロレアなど様々な教育カリキュラムから子どもに合った学校を選べる。

さらに他国に比べてビザが取得しやすいことも利点だった。物価の水準、比較的治安が良く、気候が温暖であることなども魅力に感じた。周辺国へのアクセスの良さも、旅行好きの夫婦にはうれしいポイントだ。

「学費を支払えるのか」「医療保険をどうするか」「親の介護や病気への対応は」。移住にともなう課題を徹底的に洗い出した。

「やはり仕事とお金が一番の課題で。キャッシュフローをシミュレーションしたり、ファイナンシャルプランナーに相談したりした結果、今後自分がマレーシアで仕事をすればやっていけるとわかりました」

現地で転職するために英語の勉強をはじめ、渡航前にはTOEICで800点を超えた。しかし、英語の文章を読んだり、聞いたりはある程度できても、話すことは不自由だった。そこで、都内の英語学校に通って話す訓練を重ねた。

移住時期は「小学校入学前がベスト」

いつ移住するのが良いのか、子どもの視点でも分析した。取材ではアキフミさんがまとめた詳しい資料を見せてもらった。小学校前、小学校低学年、小学校高学年、中学校、高校、大学の時期に分け、利点と欠点を比較したものだ。

低年齢での移住は新しい環境に慣れるのが早く、英語への抵抗感も少ない。一方、成長すると移住に対する子どもの意思を確認し、決めることができる。ただ、欠点として英語に慣れるのに苦労し、仲良くなった日本の友だちとも離れづらくなると考えた。

「考える力」や「自分の意見を言う力」「英語の慣れ」など14項目について、子どもの成長段階に応じて評価。小学校入学前の移住がベストと判断した。

コロナ禍で現地での視察は難しく、学校の情報はインターネットやSNS上で知り合ったインターの卒業生らから得た。移住を支援するエージェント数社にも相談をしたが、ネットで調べればわかるような情報ばかりと感じ、学校とも自分で直接やり取りしたという。入学前に受けた学校のオンライン面接も、事前にどんな質問をされるのか調べてから臨んだ。「好き嫌いはありますか」「どんな本が好きですか」などと主に親に対して子どもの普段の様子を確認する内容だった。