上手な「仮眠」で夜間睡眠効率をアップ

さらに快適に眠るために心がけてほしいのが、「仮眠」。夜の睡眠を妨げると思うかもしれませんが、上手に取り入れることでパフォーマンスを上げることができます。その大きな理由が、人間に訪れる眠気のピーク。このタイミングは1日に2回あり、午前2〜4時と、午後2〜4時といわれています。前者は多くの方が眠っている時間帯ですが、問題は後者。これを先取りして、午前12〜午後1時のランチタイムに仮眠をとると、頭がすっきりとして午後も精力的に活動を継続。結果、夜間ぐっすり眠れるというわけです。

私がおすすめする仮眠は、①ナノ・ナップ(一瞬〜数秒)、②マイクロ・ナップ(1分)、③ミニ・ナップ(10分)、④パワー・ナップ(20分)、⑤ホリデー・ナップ(90分)の5種類。①と②は椅子に座ったまま、③④は同様でもいいですし、机に突っ伏してもOKです。この4つは仕事中でも取り入れやすく、脳をすっきりとさせて、その後の生産効率アップが望めます。20分より長く寝てしまうと、眠りが深くなり起きられなくなる恐れがあるのでNG。おすすめは、眠る前にコーヒーなどを飲んでおくことです。カフェインの覚醒効果のタイムラグで、仮眠から起きるころに目が覚めやすくなります。

最後の⑤ホリデー・ナップは、その名の通り休日にとることを想定したもので、この仮眠のみ横になってもOKです。睡眠不足を解消しようと、「休日は昼まで寝ている」という話をよく聞きますが、これは推奨できません。というのも、起床時間を平日から2時間以上ずらすと体内時計が狂い、月曜の朝が一層辛くなってしまうから。これは、「ソーシャルジェットラグ(社会的時差ぼけ)」と呼ばれ、近年社会問題にもなっています。起きる時間のずれは2時間までにとどめ、ホリデー・ナップをとるほうが効率的なのです。

平日も休日も、注意したいのは仮眠をとる時間帯。午後3時までにとらないとその夜の睡眠に影響するので、それまでに済ませておくのが鉄則です。

【図表】坪田先生がすすめる5つの仮眠とその効果

成功の秘訣は目的の明確化と具体化

ここまで読んで「実際に5時間快眠法に挑戦したい」と思ってくださった方もいるかもしれません。でも、いくらやる気があっても、急に睡眠時間を削るのはNG。人間の体は急な変化には対応できません。週に15分を目安に、少しずつ睡眠時間を短くしていくのがポイント。実践中は「起きているときの自分の健康状態のチェック」も忘れずに。睡眠を削ったことで昼間ずっと眠気が取れない場合は、減らす睡眠時間をさらに少しずつにするなど、体と対話しながら進めましょう。

体質的に続けられそうなら、もっとも重要なのは「目的の設定」です。5時間快眠法はあくまでメソッドでしかないので、削った時間で「自分が何を成し遂げたいか」というゴールがなければ、長続きしません。私の場合は、本業以外に原稿執筆する時間を確保したくて、この睡眠法の実践を始めました。今も仮眠は日常的に取り入れています。ほかには、就寝前のストレッチ。スマホ、パソコンは、寝る30分前までと決めています。「理想は1時間前まで」と皆さんにお伝えしているんですが、これがなかなか難しい。

でも、すべてのメソッドを完璧に実行できる人はいません。優先順位をつけて、できることから楽しく続けることが何よりも大切です。睡眠は、非常に個性的なもの。まずは自分の生活スタイルを観察しつつ、最適な睡眠法を見つけていただきたいと思います。

起床してストレッチをする男性
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです
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※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年7月5日号)の一部を再編集したものです。

(構成=中村真紀)
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