たった1人の休みに影響される会社は危ない

だって、そうではないか。たかが1人が数日休んだだけで仕事が回らないような組織は、そもそも業務分担に偏りがあったり、仕事が属人化していたり、組織内で情報共有ができていなかったりして、別に誰かが休んでいなくても、普段から混乱が発生していることが想定される。

また、今や業務の機械化、IT化の進展は著しく、これまで人が手作業で何時間も何日もかけてようやくこなしていたような作業が、機械に任せれば数秒から数分で完了し、しかも人にお願いするよりも低コストで仕上がるなどという事例も枚挙に暇がない。

そのような技術革新にも無頓着で、業務管理も労務管理も疎かにしたままの組織なら業務生産性も低く、必然的に高い報酬も支払えない。こんな魅力のない組織には新たに人が集まることもないだろうし、いま頑張ってくれている従業員も、頑張り続ける意味を見失ってしまうことだろう。

「お前の代わりはいくらでもいる」時代は終わった

帝国データバンクが本年1月、全国の全業種2万7308社を対象に実施した調査によると、正社員が「不足」と感じている企業は52.6%を記録し、コロナ禍前の水準へと完全に戻っている。さらに、ITや建設業、物流業、医療関連など、一部業種においては7~8割の企業が人手不足を訴えており、少子化の影響で若者の絶対数自体も減少している状況でもあり、今後人手不足感はさらに高まることはあっても、解消されることはおそらくないはずだ。

【図表】正社員・非正社員の人手不足割合 月次推移
帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査」(2024年1月)より

「お前の代わりなんていくらでもいるんだ!」などというパワハラがまかり通っていた時代があったことなどまるで嘘のように、今や人を採用する困難度は極端に上がっている。

「大手ナビサイトに100万円以上費やして求人広告を出稿したのに、内定どころか応募数自体ゼロだった……」といった経営者の嘆きを聞くことも珍しくなく、現在はこれまでとはまったく次元が違うレベルの人手不足状態といえるだろう。

そんな中、各社は初任給金額を大幅に引き上げたり、転勤を極力なくしたり、リモートワークを可能にするなど、働きやすい環境整備に邁進している。このような状況下で、「自由に有休もとれない」会社がいかに人材採用と定着において劣後するかは想像に難くないはずだ。