手術直前に患者の手を握る

心得 違和感を「気のせい」にしない

朝起きて、なんか今日はいつもとちょっと違う感じがするとか、今週は嫌なことが立て続けに起こるなどと思うことはありませんか?

「気のせい」かもしれませんが、そういった「自分を取り巻く“気”の違い」を感じた場合、その違和感はスルーしないほうが賢明です。

私は手術当日、患者さんのもとを訪ね、最後に手をギュッと握ることを習慣にしています。手術前に患者さんの手を握るのは、単なる挨拶ではありません。お互いの気持ちの確認です。

患者の手を握る医師
写真=iStock.com/Cecilie_Arcurs
※写真はイメージです

これは滅多にあることではないのですが、手を握った直後に私のほうから「今日、手術をするのはやめましょう」と言うこともあります。

それは、患者さんのエネルギーを感じ取れないときです。

今日、病気と闘って絶対に元気になる! そう強く意志を固めている患者さんからは、エネルギーが伝わってきます。でもときに、そうでないこともあります。手が冷たいだけでなく、「エネルギーの交流ができていない」と感じるのです。

迷ったまま行動を起こしてもいい結果は得られない

たとえば、こんなことがありました。

患者さん自身が、じつは手術を受けることに積極的ではないのです。それでも親族から「手術を受けたほうがいい」と言われ入院したものの、本当は手術を受けたくないという気持ちが強い。事前にお会いして話したときは「手術を受けます」と口にしながらも、本当は迷い続けている。

そんなとき、私は言います。

「今日は、お帰りください」と。

緊急を要する場合を除けば、気持ちが定まっていないときに手術を受けることはよくありません。自分の体の行方は、自分の意志で決めるものです。互いの心が通じ合っていないと、最善の手術はできません。

それでも、見放すつもりはもちろんありません。迷っているなら延期しましょう、ということです。人間誰しも迷いはあります。

そして、迷ったまま行動を起こしても、自らが願う結果にはたどり着けません。

自分が感じた違和感を、大切にしてください。そして、相手から感じた違和感にも敏感になりましょう。心の揺れは、ほうっておくといずれ大きな問題となって、あなたにかならず降りかかります。

「あのときこうしていればよかった」と思うのは、うすうす違和感に気づいていながら放置した結果なのです。

流行や評判を過度に気にしない

心得 流れに執着してはいけない

何事にも流行りすたりがあります。ファッション、フード、生活スタイル、テレビタレントの人気、受験勉強のやり方など、さまざまな分野に「流行」はあります。そしてこれは、医療の世界にも存在します。

治療法、術式、投薬などでも一時は盛んに用いられていたことが、いまでは行われていないものが多々あります。