マイクロソフトは「パソコンを発明し直す」

エッジAIを用いる端末を開発する企業も急速に増加している。5月20日、マイクロソフトは、生成AIに特化したパソコンの開発を発表した。同社は「パソコンを発明し直す」と意気込みを示した。AIパソコンのために、マイクロソフトのビジネスモデルの変革も急加速している。

1990年代、米国ではIT革命が起きた。ネットに接続して文章やデータの計算ファイルを、メールでやりとりすることは当たり前になった。それを支えたのが、“ウィンテル”だった。マイクロソフトの文書作成ソフトを動かすため、CPU供給をインテルが一手に担った。マイクロソフトのソフトウェアの動作性能はCPUに規定された。

マイクロソフトがオープンAIと開発するLLMの利便性向上に、ウィンテルの体制が最適とは限らない。マイクロソフトはアームの半導体設計図を用いて、自社の仕様に最適なチップの設計と開発を強化している。演算処理能力の向上に加え、デバイス駆動時間延長に電力消費性能の向上も欠かせない。エヌビディアとも連携強化し、エッジAIの性能に磨きをかけている。

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自己完結型のビジネスが行き詰まったインテル

今後、IT関連企業のビジネスモデルは、オープンに他企業と連携しつつ事業運営体制を強化し、新しい付加価値をより多く生み出すことが重要になる。インテルはこの点でつまづいた。同社はチップの設計図から、回路デザイン、製造(前工程)、チップの切削、研磨、封入(後工程)、販売などを自己完結した。CPUに関するあらゆる価値が社外に漏れ出ないようにした。

しかし、デジタル化が加速し、スマホの登場、AI分野の急成長などにより、自己完結型のビジネスモデルは行き詰まった。

それに対しエヌビディアは、TSMC、SKハイニックス、アーム、マイクロソフトなどとの連携を強化している。自社の強みを発揮できるGPUの設計と開発を強化する。それ以外の分野では他社の製造技術やソフトウェアを活用する。それにより、顧客が欲する製品を、より高付加価値でより迅速に供給する力を高めている。