世界経済の常識を覆す革命が起きている

5月22日、米エヌビディアが決算を発表した。同社の2月~4月期の売上高は前年同期比3.6倍の260億4400万ドル(1ドル=155円で約4兆円)、純利益は同7.3倍の148億8100万ドル(約2.3兆円)だった。5月~7月期の売上高予想は280億ドル(約4.3兆円)前後だ。実績、収益見通しともに市場予想を上回った。

写真=EPA/時事通信フォト
マイクロソフトのブラッド・スミス社長

現在、エヌビディアは、文字通り世界のAI分野を牽引している。同社の“画像処理半導体(GPU)”の性能向上によって、AI関連の広い分野の成長期待が高まっている。AIの性能に決定的な影響を与える半導体の能力向上で、AIの用途が飛躍的に広がり社会全体に有効な問題解決手段となっている。

ここへきて、 “AIパソコン”の需要が増えている。マイクロソフトは、エヌビディアや台湾積体電路製造(TSMC)、半導体設計企業のアームなどとの協業関係を強化した。ビジネスモデルはこれまでの自己完結型から、よりオープンに付加価値を創出する形態へ世界の企業の事業運営も変化している。世界経済の常識をAIが覆す“革命”が起きている。

AIチップ市場はエヌビディアの独り勝ち状態

今後、AIを搭載したデバイスの普及により、チップの省エネ、演算処理能力向上などのニーズは一段と上昇するだろう。そうした環境変化に対応するため、アライアンスやコンソーシアム体制を強化する企業も増えるだろう。AI革命に対応できるか否か、わが国の企業、産業、経済の中長期的な展開に重大な影響があるはずだ。

2月~4月期のエヌビディア決算をみると、先端のAIプロセッサーである“H100”の販売は予想以上に増加した。H100は売上高全体の87%を占めた。エヌビディアはTSMCや韓国のSKハイニックスとの関係を強化し、H100の供給体制を強化した。

現在、供給は需要に追い付いていない。世界のAIチップ市場でエヌビディアは80%程度のシェアを抑えている。同社の独り勝ちだ。

決算期が違うため単純に比較することはできないが、1月~3月期、米AMDやインテルの決算は振るわなかった。AMDもGPUの開発を強化しているものの、ゲーム用半導体の需要減少が収益増加を妨げた。インテルは微細化や製造受託事業の収益貢献が遅れ、最終損益は赤字だった。4月~6月期の売上高見通しも市場予想を下回った。