五分刈りでもシラミで真っ白

アタマジラミは毛髪に寄生するので、丸刈りにすれば、寄生できなくなる。

「ところが、五分刈りのような短髪にすれば大丈夫だと思ってしまう母親が大勢います。以前、ぼくのところに連れてこられた児童は、5ミリくらいの髪の毛が真っ白だった。アタマジラミの卵や抜け殻がびっしりとついていた」(矢口さん)

アタマジラミは通常のシャンプーでは死滅せず、洗髪しただけでは頭髪にしがみついている。

成虫や幼虫、毛髪に固着した卵を除去するには、厚みのある昔ながらのツゲの「すき櫛(ぐし)」を用いるのが有効だという。櫛の目が細かいので、すき櫛が通りやすいように、事前によくブラッシングしておくこと。とった虫体や卵は使わなくなった歯ブラシなどで落とす。もちろん、這い上がってくるようなことはない。いつの間にか櫛を裏返してしまうと、せっかくとった虫体が髪の毛に戻ってしまうので注意が必要だ。

沖縄では抵抗性のアタマジラミ

薬物で駆除する方法もある。ピレスロイド系殺虫剤であるフェノトリンを含む「スミスリンパウダー」もしくは「スミスリンシャンプー」を使い、3日に1回を、3、4回繰り返し処置すればアタマジラミは全滅する。毛髪に固着した卵や抜け殻はすき櫛で除去する。しばらく毛髪を観察して新たな卵が見つからなければ、駆除は完了だ。

ただし、最近はピレスロイド系殺虫剤でも死なない「抵抗性のアタマジラミ」が世界的に広がりつつある。たとえば、沖縄県では抵抗性のアタマジラミにほぼ置き換わっており、スミスリンパウダーやスミスリンシャンプーが効かない。

それを受けて、3年前、アース製薬が発売したのが「シラミとりローション」だ。ジメチコンという成分がアタマジラミの気門をふさぎ、窒息死させる。

「沖縄県以外では、今のところ、抵抗性アタマジラミがきわめて少ない状態なので、通常のスミスリン処置で駆除が可能と思われますが、今後は増加が懸念されます」(夏秋医師)

スミスリン処置で死滅しない場合、抵抗性アタマジラミである可能性がある。

昭和時代のイメージは誤りだ。シラミは不潔だからわくのではなく、誰にでもつく可能性があるし、正しく処置すれば根絶できる。子どものためにも覚えておきたい。

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

当記事は「AERA dot.」からの転載記事です。AERA dot.は『AERA』『週刊朝日』に掲載された話題を、分かりやすくまとめた記事をメインコンテンツにしています。元記事はこちら
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