道具や衣類、交通費、審判資格の費用…

そうした中学校においては、顧問をする教員の指導負担が高まり、公費負担や保護者負担されない部分が教職員の自腹によって賄われるようになる。それが、顧問自身が使用する道具や衣類、遠征や大会出場のための交通費、審判資格を得るための費用などで、経済的に豊かな家庭が多く部活動が盛んであれば、教員の部活動に関わる自腹が増えるのは明らかだ(※4)。保護者に求められると活動を縮小しづらかったり、より活動を活発化する教員の評価が高まったりする状況も想像でき、より自腹が増えていく可能性もありそうだ。

また、勤務校の「教職員の団結力が高い」に「あてはまらない」と回答した教員ほど、部活動に関わる自腹をしている。自身の学校が「教職員の団結力が高い」学校に「あてはまる」と回答した教員の41.4%(232人中96人)が部活動に関わる自腹をしているのに対し、「あてはまらない」と回答した教員の自腹発生率は53.1%(130人中69人)となっている(図表4)。

中学校正規教員:教職員の団結力と部活動に関わる自腹
福嶋尚子、栁澤靖明、古殿真大『教師の自腹』(東洋館出版社)185ページより

これはどういうことか。

教職員が団結せず個人主義的に行動している学校ほど、各部の活動の熱心さが異なり、顧問をする教員が時間的負担や経済的負担をどれほどにかけているかに互いに無頓着になっているのかもしれない。あるいは教育課程や学校行事など教職員全体で取り組む物事についての連携が不十分な状態においては、学校財務そのものが成り立っておらず、その結果、各部の活動において教職員の自腹が発生しやすいともいえるだろう。

いずれにせよ、部活動や自腹が「その人個人のこと」という認識が強ければ、どれだけ熱心に部活動に取り組んでも、自腹をしていても、それを制止する、なだめる力は弱くなる。こうした認識が背景にあると思われる。逆に、自腹をしてでも部活動を活性化させるべきと思っている人からすれば、それについてこない他の教職員は「団結力」が弱いとも捉えられるかもしれない。

※4 青柳健隆ほか「運動部活動顧問の時間的・精神的・経済的負担の定量化」日本スポーツ産業学会『スポーツ産業学研究』27(3)号、2017年(299-309頁)によれば、中学校・高等学校の運動部活動の顧問がしている経済的負担は、飲食費・交際費、交通費、ウエア・シューズ等の衣類、宿泊費、スポーツ用具、教本・DVD等の教材費などを全部まとめて、年間平均で13万6491円に及ぶという。