ランダムフォトカード商法がファンを疲弊させている

さらに、K-POP業界の最大の問題として批判されているアルバムの売り方についても言及した。

「ランダムカードを作ったりミロネギ(押し出し)したりするべきではない。みんながそうするせいで、アルバム販売枚数がずっと右肩上がりの異常な市場になってしまった。そしてファンにすべての負担が転嫁される。K-POPアルバム市場全体が間違っている」

レコード会社はアルバムの販売枚数を伸ばすために、メンバー別のフォトカードをランダム封入して販売し、ファンは推しのフォトカードを集めるために1人で数十枚もアルバムを買う。このような消費は結局、フォトカードだけを残してアルバムはゴミ箱に捨てられるなどの環境問題も引き起こす。

「ミロネギ(押し出し)」とは、流通会社や販売店が事前に大量に購入し、後にサイン会などアーティストを動員するイベントを開くことで初動売上を増やす販売手法のことだ。K-POP業界のこうした慣行は、若年層のファンに莫大な金銭的負担を転嫁していると指摘されている。

「私はそれを直すためにNewJeansをつくったんです。私がHYBEにムカつくのは、(HYBEが)業界を濁らしているからです」

時価総額は“御三家”の合計をはるかに上回る

BTSの世界的な成功によって建てられたHYBE帝国は、名実共にK-POP業界の最大手として君臨している。HYBEはBTSの軍白期(軍入隊で活動を休む空白期)を埋めるため、2021年から数多くのレーベルを攻撃的に買収合併し、短期間で規模を拡大した。おかげで、現在はかつて「K-POPの御三家」と呼ばれたSM、JYP、YGの3社を合わせたものの2倍を超える時価総額を誇り、年間売上は2兆ウォン(約2300億円)を超える大企業に成長した。

K-POPグループのライブに参加する人々
写真=iStock.com/sibway
※写真はイメージです

しかし成長に力を注ぐあまり、「音楽業界の悪習や不条理に対抗して業界に革新をもたらす」という初期の経営哲学を失い、いつのまにかK-POP消費層には、「ファンの財布をはたかせるためにアーティストを酷使させる企業」と認識されてしまった。

そして、はてしなく伸び続けていたアルバムの販売量は減少傾向に転じ、K-POP業界の売上は停滞している。この現実と照らし合わせると、HYBEのお家騒動に対する若年層の反応はK-POP産業全体の危機を物語っている。HYBEが率いる現在のK-POPシーンに対する若い消費者の不満が臨界点に達したことを示唆しているといえるだろう。

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