血糖コントロールが不十分な場合には薬物療法を開始

治療についても少し触れたいと思います。糖尿病治療の流れとしては、どの段階にあっても食事や運動療法は必要ですが、血糖コントロールが不十分な場合には薬物療法を開始します。治療薬にはインスリン注射薬、内服薬、インスリン以外の注射薬の3タイプがあります。

糖尿病患者さんには、合併症や年齢、肥満などさまざまなリスク因子を持たれている方が多く、一概にどのお薬から始めましょうという決まりはありません。それぞれのお薬によって、血糖降下作用や副作用なども異なりますので、個人個人に合わせた治療と効果を定期的に見直しながら進められていきます。診察時には、合併症の状態や予防方法、治療についての心配やご自身の生活リズムにあった治療法の相談ができると良いでしょう。

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写真=iStock.com/FredFroese
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また、血糖をさげる薬を内服していたりインスリン注射を行ったりしている場合は、その日の体調や、運動量の増加、食事時間がずれたなど、ちょっとした生活の変化が引き金となって低血糖をおこすことがあります。冷や汗や動悸、空腹感などの軽度の低血糖の症状が現れた場合には、飴(ブドウ糖)やブドウ糖を含む清涼飲料水などの糖分を摂取しましょう。疑う症状が現れた場合は、血糖値を測定し確認することが大切です。

「イザという時」のために職場にも伝えておくと良い

低血糖を繰り返すと、低血糖症状を感じにくくなり、他の人の助けが必要なほどの症状を起こすこともあります。そのような状態を重症低血糖と言い、重症低血糖を起こすと意識が遠のく、昏睡や痙攣を起こすなどの重い症状が現れとても危険です。適切な対処が行われない場合には、命に危険が及ぶ可能性もあります。

上司や同僚の理解のほか、産業医や産業保健師を活用するなど、信頼のおける方に病状を伝え、いざという時に力になってもらえるよう安心できる状況を作られると良いでしょう。仕事上対処が難しい場合は会社に相談するようにしましょう。また重症化した場合を想定して、職場管理者に対応方法をあらかじめ伝えておくことも大切です。

また職場以外の社会的なサポートとして、糖尿病の合併症による障害や治療が難しい状態の場合に利用できる国や自治体の助成制度や、全国の病院や診療所に設置された糖尿病患者のための患者会もあります。経済的なサポート、悩みの共有や治療法の情報交換の場として、ぜひご活用いただければと思います。

現在糖尿病治療においては、糖尿病のない人と変わらない寿命と生活の質(QOL)が目標とされていますが、いつか糖尿病が治癒する病気となるように、多くの期待を背負って研究や開発が進められています。治療と仕事の両立は容易ではありませんが、諦めることはありません。正しい知識と周囲の支援を活用し、健康な時と同じように人生を楽しめるよう、健康管理に取り組まれてください。

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