クレジットカードや住宅ローンはいまだに普及せず

銀行から借金して消費するというのは、中国ではまだ一般的ではない。ある意味、中国の国有銀行が個人に住宅ローンを組むようになったのは、大きな進歩だったといえる。1995年には「担保法」が制定・施行され、銀行は国有企業以外の法人や個人への融資について基本的に有担保原則となった。中国の銀行は個人に融資を行う際、家や車などの固定資産を担保に設定している。

それでも中国ではいまだに、高齢者ほど節約を美徳として消費を控える傾向がある。基本的にお金があれば、できるだけ貯蓄しておこうとする。この点については日本人とほとんど同じだが、違うのはここから先の行動である。中国は貯蓄に対してリターンを求めるが、日本人はリスクをとってまでリターンを求めない。だからこそ日本では、銀行の預金金利がゼロになっていても、ほかの運用方法を考えないでせっせと預金する人が多い。

一方、中国人はお金を貯めたら、できるだけリターンを最大化しようとする。中国の銀行の定期預金の金利は世界的にみて高い水準にあり、物価は大きく高騰していないにも関わらず、なんとか利益を最大化させようとするのだ。

「株はギャンブル」だから不動産への投資熱が高まった

ただし、中国では、株式に投資する人は極端に少ない。元国務院発展研究センター教授の経済学者・呉敬璉ごけいれんは、かつて「中国の株式市場は賭博場のようなものである」と指摘した。実際株式に投資したことのある経済学者が、「賭博場はまだルールというものがあるのに、今の株式市場にはルールがない」と批判したこともある。おそらく大損したのであろう。中国では株式市場の設立後、何回かブームは起きたが、そのあと大暴落した。とくに個人投資家の多くは大損してしまい、株式投資のリスクが周知徹底された。

中国のアパート建設現場の航空写真
写真=iStock.com/lzf
※写真はイメージです

不動産投資は証券投資と違って紙くずになるリスクが低く、個人投資家たちに選好されているのだと思われる。しかし、個人にとってマンションを購入するのはかなりの高額投資であり、家族や親戚からお金を借り入れてまで購入するケースが多い。親友同士でお金を出し合ってマンションに投資する「群」(クラブ)まで現れている。

むろん、実際に不動産投資ができるのは一握りの富裕層である。多くの人は投資信託の一種である理財商品に投資しているが、管理がずさんなうえ、詐欺も横行しているため、大損した人も少なくない。中国人にとって、手持ちの資金をどのように運用するかは悩みの種である。