中小企業の節税にはどんな方法があるのか。税理士の松岡靖浩さんは「経営者からは『税金を払うくらいなら飲みに行って経費として使ったほうがいい』という声をよく聞くが、これは節税ではなくただの浪費なので、気をつけたほうがいい」という――。

※本稿は、松岡靖浩『会社をつぶさない社長の選択』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

ネオンが輝く夜の銀座
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国は中小企業に積極的な設備投資を促している

事業規模を拡大する上で欠かすことができないのが、設備投資です。

定期的な設備投資は、生産効率の向上や売上の拡大など、事業拡大の起爆剤として一役買うケースも珍しくありません。ただ、設備投資は資金的に大きな負担が伴うというデメリットも存在します。そのため、国は税制優遇措置として「特別償却」や「税額控除」などを設け、中小企業に積極的な設備投資を促しているのです。

この特別償却と税額控除はうまく利用すると大きな節税効果を期待できますが、両者の違いを把握していなければ、十分にその効果を享受できない可能性もあります。どのような違いがあるのかしっかりと理解しておきましょう。

ここでは、中小企業投資促進税制を例として解説していきます。

まず、特別償却について。特別償却とは、通常の減価償却費に加えて別途で経費が追加計上できる制度です。

「税額控除」は、まるまる法人税から差し引くことが可能

たとえば、ある会社が耐用年数8年(償却率0.250)の1000万円の機械を購入したとしましょう。通常であれば1000万円×0.250=250万円を減価償却として、費用計上することができます。しかし、特別償却が利用できる場合は、これに加えてさらに償却費を加算することができるのです。

中小企業投資促進税制の場合、通常の減価償却に加えて基準取得価額の30%を追加で償却できるため、1000万円×30%=300万円を費用として追加計上可能です。初年度で250万円+300万円=550万円を一気に費用計上できるのです。

一方の税額控除は、法人税等から直接、一定の金額を差し引くことができる制度です。中小企業投資促進税制の場合、基準取得価額の7%が税額控除の対象になるため、たとえば1000万円の機械を購入した場合であれば1000万円×7%=70万円、これをまるまる法人税から直接差し引くことが可能となります(ただし、上限が法人税額の20%までという制限があるため、70万円をまるまる控除するのであれば、納税すべき法人税額が350万円以上必要です)。