パチンコ業界と警察OBには深い関係がある。関西学院大学名誉教授の鮎川潤さんは「パチンコ台の許認可を出している団体の幹部は、そのほとんどが警察OBで占められている。現在でも一見わからないような形で天下りが続いており、なかにはパチスロメーカーの顧問や社長に就任する警察OBもいる」という――。(第2回)

※本稿は、鮎川潤『腐敗する「法の番人」 警察、検察、法務省、裁判所の正義を問う』(平凡社新書)の一部を再編集したものです。

パチンコ店の中に並ぶパチンコ台
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定年後の警察官僚には「三つの道」がある

日本の警察は二重構造になっている。警察庁という国家公務員の総合職の試験に合格した数百人のキャリア官僚と、各都道府県の警察本部に所属する約26万人の警察官が存在する。各都道府県の警察本部長、主要な都道府県警察本部の刑事部長、公安部長などの地位は、警察庁からキャリアが派遣されて、ほぼ独占している。

しばしば指摘されるように、警察官の採用試験に合格した巡査は幸運であれば、ごく少数のエリートとして警視、警視正になり署長で定年を迎える。一般的には、巡査部長、警部補で定年退職を迎える者が多い。都道府県警の警察官として採用された場合であっても、警視正以上の地位に就いた場合は国家公務員となり、給与は国から出される。

こうしたたたき上げの警察官に対して、キャリア官僚は都道府県警察本部の要職と警察庁とを往復しながら、地位を昇っていく。採用されて2年で警部、警視正を経て、20余年で警視長ののち、警視監で定年を迎える者も多い。キャリアは、警察の関連団体、一流企業や金融機関に天下る。かつて、警察庁長官ののちに政界に進み、官房長官、法務大臣などを歴任した後藤田正晴は次のように述べている。

一般に、警察庁長官などのポストを終えた役人には、三つの進む道がある。一つは公社・公団の役員などに天下ること、二つめは政界に出ること、そして最後は、小遣銭くらいは稼いで悠々自適の生活をすること。このうち、私がもっともやりたくなかったのが、天下りであった。別に本人にそのつもりがなくとも、元いた役所の尻尾がついてまわり、どうしても役所の後輩に面倒をかけることになるからだ。(後藤田正晴『政治とは何か』講談社、1988年、55頁)

警察庁長官を終えた直後に、政権の内閣副官房長官を務め、2年も過ぎないうちに政権党の代議士として立候補する。しかし、このことが、警察法が規定している「不偏不党かつ公平中正を旨とし」(第二条二項)という不偏不党性及び公正中立性に抵触しないと断言できるのか……。