男性からの評価は対照的

定は捕まって新聞に載った姿が婀娜あだな美人と評判になり、全国から獄中に「結婚したい」といった手紙が殺到した。田舎臭い容姿のカウには、そんなもんなかった。

なんといっても、書籍化、映像化の差は大きい。定の方はモデルにした小説もたくさん書かれたし、『愛のコリーダ』はじめ、映画もドラマもいろいろ作られた。

阿部定パニック
阿部定パニック[写真=東京朝日新聞(1936年5月21日版)/PD-Japan/Wikimedia Commons

カウの場合、記録性の高い資料みたいな書籍ばかりで、カウを主人公にした小説は見当たらない。映画も、カウとは似ても似つかない吉永小百合様の『天国の駅』しかない。

昔から、この違い、特に男受けの差は気になっていた。たぶんカウは、とにかく金儲けが好きで、若き日の巡査を除いてまったく男には惚れず、男など利用するもの、踏み台、道具にすぎなかったところが挙げられよう。なんたって、がめつい不美人。

対する定は、いつも男に惚れている。損得抜きに性行為が大好きで、男なしでは生きられず、とにかくエロい。さらに金銭欲のない美人。そりゃ男としては、「そんなに俺のこれが欲しいか」とエロの定番の台詞を吐きたくもなり、吉蔵さんがうらやましくもあり、自分が言われた気にもなる。

でもカウには、「お前の粗末なモノなんか要らないよ、金さえ出せばお前になんか用はない」と吐き捨てられた気にさせられるのだ。

りりちゃんにだまされる男性の特徴

さて、明治生まれで昭和前期の犯罪者の後に、平成生まれで令和の犯罪者となった、「頂き女子りりちゃん」(本名 渡邊真衣)の話である。

本人のYouTubeより
本人のYouTubeより

ご存じ、年配男性達から詐欺で大金を巻き上げ、そのマニュアルも女子達に売りつけつつ、ホストに貢ぎ続けて捕まった。

そんなりりちゃんに、わりと女達は同情的だ。「りりちゃんもホストにだまされていた」「『おぢ』も脇が甘い」みたいな反応が多い。

なんたってりりちゃんが貢いだホストの関係は、定の愛人みたいに、本当に惚れて惚れられていた関係ではなかったのは可哀想だし、大金を出せる男を捕まえられる手練手管は誉められたもんじゃないにしても、どこか学べる点はあるかもと思わされる。

だが、ネットなどの反応、そして周りの男達に取材してみた限りでは、「死刑でよし」くらいの勢いで、我がことのように怒っているおぢが目立つ。

もちろん被害者はお気の毒だとは思うが、りりちゃんにだまされるタイプのおぢは、理想の女が2次元にいるタイプが多いのではないか。

若くて美人で巨乳で賢くて従順で、ぼくにだけ淫乱な清純な乙女。りりちゃんは、そんな現実にはあり得ない女を演じられたのだ。だって、だます気で近づいているのだから。