結局、ホストからの愛は得られなかった

りりちゃんにだまされないタイプのおぢは、わりとモテた経験がある。なんたって、若い女から「おぢ属性」で見られていることにも自覚的だ。だまされるタイプは、最初からまさか自分が「おぢ属性」でしか見られていない、とは思わないのだ。

なんといってもりりちゃんは、せっかく阿部定が定着させてくれた、男性はいつでも女性に求められるし、愛欲に耽る女性は「私、ううん、女はみんな、男のコレが切り取りたいほど欲しいの」という甘い囁きをするであろうという妄想を、ばっさり否定した。「おぢとの交わりなんか、要らない。おぢは金だけ出せ」と、カウの声で罵ったのだ。

そんなりりちゃんも、ホストとの情交より愛が欲しかったわけなのだけど、ホストに愛を求めるのは、おぢが頂き女子に愛を求めるのと同じことである。そこを本人は理解していたのだろうか。

詐欺師であってもうそつきではない

りりちゃんは人は殺してないが、阿部定よりも重い懲役9年・罰金800万円の実刑判決が下された。

その前、検察からの求刑が13年だったことを聞いたときに書いたとされる本人の手紙は、

「ちょうえき13年……ーっ⁉
なが!!!
ながーい‼!
ながながながーい‼‼
ながびよーん。
ちょっぴり涙を流してみたけど、私の涙甘いの。」(原文ママ)

と公開されている。

Xアカウント「りりちゃんはごくちゅうです」より

定は出所後、世話になった人に「所詮、私は駄目な女です」との手紙を置いて消えた。カウは学校にあまり通えなかったので、「殺人をおかしてさいばんになるとゆうこともしりませんでした」といった上申書を出した。

昭和生まれから見れば、破壊力では定とカウを上回る、りりちゃんの文章。

生きた時代も生育歴も犯罪の目的も何もかも違うので、そのまま比較はできないが、定の諦めとカウの自己正当化もなく、さらには、両者に垣間見える開き直りもない。

懲役13年なんて、殺人並みの刑期だが、そこで「ながびよーん」は逆に真摯な魂の叫びかという気もしてくる。心証を良くしようと計算したら、こうは書かない。りりちゃんはここで、裁判に有利になるような、被害者が少しは納得してくれるような、定型文みたいな模範的文章は書かず、ただただ心のままに言語化したのだとすれば、詐欺師であってもうそつきではなくなっている。