私たちの記憶容量は「1GB」ほどしかない

そのABLEに、認知科学者で米国ブラウン大学のスティーブン・スローマン教授をお招きしました。2021年のことです。

スローマン教授は、私たちの記憶容量は「1GB」ほどしかない、とお話しされていました。いまやコンビニで1個600円程度で購入できる16GBのUSBメモリですら、人間の16倍の記憶容量があるわけです(詳しくは、スティーブン・スローマン、フィリップ・ファーンバック共著、土方奈美訳『知ってるつもり 無知の科学』(ハヤカワ文庫)を参照)。

「記憶の容量」はかなり小さい
写真=iStock.com/78image
「記憶の容量」はかなり小さい(※写真はイメージです)

128人集まってやっとiPhone1台分

最新のiPhoneなら、一番容量が少ないものでも、128GBもあります。私たちが128人集まってやっと、iPhone1台(それも低いスペック)のものと記憶力で勝負できるというわけです。人間は記憶貯蔵装置ではないのです。

記憶容量選手権での「人間」の成績は?
記憶容量選手権での「人間」の成績は?

容量がいっぱいになってしまったメモリやスマートフォンは、保存データを消すか、新しく買い替えるしかありません。

人間の脳は、買い替えることは当然できませんから、保存していたデータをなんとかするしかない。

しかし、電子機器のように画面を確認して「残す情報」と「消す情報」を仕分けることはできません。