次は各党がコンセンサスを形成する局面
政界では、安倍晋三元首相が熱心に取り組んでいたが、退位問題が生じたので任期中に仕上げられなかった。この問題は制度についてのきちんとした歴史や法律論に造詣が深く、具体的な内情についての知識も必要だったので、余人をもって代えがいところがあった。
現在の構図は、岸田首相の支援の下で麻生太郎副総裁と茂木敏充幹事長が自民党において中心になっている。2人とも長年、この問題に関わってきたので心強い。維新の党や国民民主は、自民党以上にこの問題に熱心だ。
しかし、今回の議論の展開で方向を決定づけたのは、公明党かも知れない。公明党は、こうした左右の対立という構図の問題にはあまり関心を示してこなかったが、國重徹衆院議員など法律に強いメンバーが緻密に議論を整理し、的確な意見を出して連立与党の自民党を助けた。
立憲民主党は、内容的には十分に彼らの意見は踏まえられているのにもかかわらず、女性皇族の夫まで皇族とすること拘泥したり、旧皇族の養子案について妨害のための時間稼ぎともみえる難点を指摘するなど、満額回答を求めたりしている。これではコンセンサス形成は難しく、佳子さまや愛子さまの結婚に議論が間に合わなくなるリスクを増大させているように見える。
いずにせよ、いろんな意味で、時間との勝負なので、これ以上、結論を遅らせることは、各党ともやめてほしいと思う。
「愛子天皇」は国会における議論の対象外
なお、国会での議論や皇室の実務と関係ない世界では、「愛子さまを天皇に」という人もいるが、それは今回の議論の対象にはなっていない。
なにしろ上皇陛下の退位に伴う皇室典範特例法で、秋篠宮殿下を皇嗣殿下とし、皇太子と同じに扱うことを決め、天皇即位の際の三種の神器に対応するともいえる「壺切りの剣」を引き継ぐ皇嗣礼も実施し、英国王戴冠式に出席してお披露目もすんでいる。
また、悠仁さまが、心身ともに健やかにお育ちになり、帝王教育も順調に進んでいる中で、現実的な選択とはいえまい。
英国などで王位継承原則を変えているが、すでに生まれた子については変更しないのが国際常識である。皇位継承問題を論じながら、世界各国の制度についての知識が乏しい人が多いのは残念だ。