映画出演で知った「リスペクトミーティング」とは何か
そこで白石監督、プロデューサー各位と初顔合わせとなりました。
プロデューサーからは「リスペクトミーティングの一環として、スタッフの前で『柳田格之進』を一席やってもらえないか」という打診を受けました。リスペクトミーティングとは、相互理解を深め、尊敬し合う関係をつくるミーティングのことだそうです。
白石監督は、かつて指導の名のもとにパワハラが当たり前だった映画界を変えようと、『孤狼の血 LEVEL2』の撮影からスタッフとともにパワハラ講習などを受ける「リスペクト・トレーニング」を導入したこと でも知られています。
「落語の背景、江戸の長屋の生活模様などを、落語を通じて若いスタッフに馴染ませてもらいたい」という趣旨で、2月半ばに京都にある松竹撮影所試写室で語ることになりました。「まずはスタッフさん同士から、お互い理解を敬意を持ち合い、諸々積み重ねてゆく」、つまり「リスペクトし合う」コミュニケーションこそがパワハラやセクハラを呼び招く空気感を拒絶するのではという、「信念」を感じたものです。
談志が嫌っていた「柳田格之進」
ちなみに「柳田格之進」のあらすじは以下の通りです。
貧乏を絵に描いたような暮らしぶりに中、ある日、碁会所で大商人である萬屋と仲良くなり、親交深めてゆく。そんな中、萬屋での月見の宴の翌朝、番頭が主に「昨晩の細川様の掛け金の50両がまだ帳面に入っていませんが」と尋ねる。
主にとっては寝耳に水だったのだが、番頭は昨晩離れで柳田と差し向かいで碁に興じていた主に間違いなく渡したと言い張る。主は「私の小遣いで埋め合わせる」いうのだが、腑に落ちない番頭は柳田宅を訪れる。
潔癖な柳田は疑いをかけられたものと恥じ、切腹をしようとするのだが絹に止められる。
その後、絹は吉原の「半蔵松葉」という女郎屋に自ら赴き50両をこしらえた。その大金を柳田は萬屋に届ける。
この一件を呑気に話す番頭に不信感を抱いた主が番頭とともに柳田宅を訪れると、もぬけの殻。その後、年末のすす払いで奉公人が離れの額縁の裏から50両を見つけ出す。主が月見の宴の晩、預かった50両をそこに置き忘れていたのだった。
すぐさま奉公人総出で柳田父娘を探すのだが、一向に行方はわからない。やがて年が明け1月2日、番頭が柳田と雪の中再会する。土下座し、事情を打ち明けると、柳田はおもむろに「明朝その方宅へ参る。主とその方二人の首をはねる」と言い残して去ってゆく。
あくる日、萬屋宅を訪れた柳田はその大金は娘が吉原に身を沈めてこしらえたものと言い放ち、両名の首をはねると宣告する。覚悟を決めた主と番頭だったが、斬られたのは碁盤だった――。
講談から落語になった無骨ながらも武士の気概が描かれた名作です。
ちなみにこの落語を、師匠談志は正直嫌っていました。いわく「今の時代には合わない」とまで言い切って、口演することはありませんでした。