※本稿は、小林弘幸『自律神経の名医が教える すごい「悩み方」の技術』(草思社文庫)の一部を抜粋したものです。
上手に悩むために必要な3つのスキル
私は「悩み方」というものは、トレーニングを重ねればどんどんうまくなっていくものだと考えています。言わば、筋トレと一緒です。筋力トレーニングはがんばればがんばっただけ着実に筋肉がついてきますよね。
悩み方もそれと同じで、普段から意識して「とことん悩み抜く」ようにしていると、着実にスキルが上達してうまく悩めるようになってくるものなのです。つまり、「悩み抜くためのトレーニング」「やり抜くためのトレーニング」を行なって「悩み抜く力」をつけていくといいわけですね。
トレーニングを行なう場合は、「悩みの大きさごとに優先順位をつける」「極力、時間をかけない」「悩み事の問題点を書き出す」という3つのスキルを軸にして、合理的かつ効率的に「悩み抜く作業」を積み重ねていけばいいのです。一歩一歩着実に悩み抜く力を蓄えながら、悩み上手になることを目指していくといいでしょう。
なお、悩み抜く力を身につけていくには、これまで紹介してきたもの以外にも「覚えておくとけっこう役立つハウツー」がいくつかあります。いずれも「ちょっとした考え方のコツ」のようなものなのですが、決して軽んじてはいけません。悩み方を究めている一流の人たちは、むしろこういった「小さな心の習慣」こそを大切にしているものなのです。
この章では、こうした「悩み抜く力をつけるために役立つ小さな心の習慣」をセレクトして紹介していくことにします。みなさん、ぜひこれらのハウツーを習慣にして、悩み抜く力をレベルアップしてください。
一流のアスリートは悪口を言わない
悪いことは口に出さない
一流のアスリートは、決して他の選手の悪口を言いません。たとえ、自分が大の苦手としている相手でも、相手をけなすことはせず、相手のプレーをほめたたえます。
なぜなら、誰かの悪口を口にすると、結果的に自分に跳ね返ってきて、自分のパフォーマンスに悪影響を及ぼすことを心得ているから。また、相手をほめたたえる言葉を口にすると、それも自分に跳ね返ってきて、自分のパフォーマンスに好ましい影響をもたらすことも知っています。
これは「ミラーイメージの法則」と呼ばれる心理学メソッド。自分の口から出た言葉は、鏡のようにいつか自分に返ってくる。他人へのマイナスの言葉は自分をおとしめることにつながり、他人へのプラスの言葉は自分を高めることにつながるというわけです。
これは、アスリートだけでなく、一般のわたしたちも、仕事や生活の中で心して実践していくべき「法則」ではないでしょうか。
他人の言動を批判したり、他人の評価を落とすようなことを言ったり、マイナスの否定的な言葉はできるだけ口から外に出すのを慎んでいきたいものです。