医療を助けるAIディープラーニング

生成AIが、世界を変えています。

医療でも間違いなく変化を起こしていきますが、最前線で本格的に実装されるのは、しばらく後のことになります。医療で使われる技術というのは、患者さんの命にかかわることですので、安全性の検証がすごく大事。それが人々の体にどういう影響を与えるのかという検証を踏まえて、実装されていくんですね。

今、医療現場で使われているAIというのは、数年前の第3次AIブームの時に世界を席巻したディープラーニングと呼ばれる技術です。囲碁の名人を打ち負かした(2016年3月に囲碁AI「Alpha GO」がトップ棋士に勝利)ことで有名になったと思うんですが、このディープラーニングを使った医療が、今まさに現場で実装され始めている。そんな段階です。

画像診断と相性がよく既に強力なツールに

ディープラーニングと相性がいいのは、画像関連の分野。画像診断して腫瘍を見つけるなど、既に非常に強力なツールになっています。

今一番有効な使い方は、人と共存させながらチェックをすること。人間2人でダブルチェックをすると、2人目は手を抜くとは言いませんが、どうしても注意力が落ちてしまいます。AIにはそれがありません。AIにまずチェックさせたり、AIにサポートさせながら人間が見たりすることで、人間の知覚を拡張していくところに大きな役割があります。

とはいえ最終的な判断は、やっぱり医師が下します。AIが人間と置換するかどうかというのは、少しまだ早い部分があります。雑務的な部分をAIがさっと簡単にしてくれたり、馴れによって落ちてくる人間の集中力をサポートする。そのような形で使われているのです。

医療においては、注意事項が他のビジネスフィールドに比べてたくさんあります。一定規格の新製品を出すときに、日本だとPMDA(医薬品医療機器総合機構)、アメリカだとFDA(アメリカ食品医薬品局)など当局の認可が必要。検証のためどうしても時間がかかってしまうのです。AIの実装についても同じことが言えます。他のデジタル分野で、たとえばアプリを作るとか、ビジネス提案をするといった場合のスピード感とは違ってくるのです。

4~5年前から、アップルやグーグルなどテックジャイアントと呼ばれる企業が、それぞれ異なるアプローチで医療分野参入の戦略を打ち出してきています。でも彼らでもなかなか大きな成果を上げづらい。他の分野なら、日常生活をおくる中で生まれる、言葉は悪いですがそこらへんにある情報を基にしてもかまわないところがありますが、医療では精度の高いデータを取らないといけない場合が多い。そういう質の高いデータは溢れていないので、ある程度コストをかけて取りにいかないといけません。この点は、時間がかかったり、他のプレーヤーが苦戦する要因かなと思います。