改正の必要はなく、いまの民法でも共同親権は選べる

2024年4月の法務委員会に参考人として呼ばれた岡村晴美弁護士(名古屋南部法律事務所)に、共同親権について取材した。岡村氏はこれまで600件以上の離婚事件を手がけて、離婚相談に応じた件数は1500件を超える。

岡村晴美弁護士(名古屋南部法律事務所)
岡村晴美弁護士(名古屋南部法律事務所)、写真=本人提供

「『民法改正で、父母が協議して共同親権を選べるようになる』と説明されることがありますが、それは争点ではありません。

実は、現行法でも親権の共同行使(共同親権)は可能です。父母が協議できる関係であれば、親権を単独行使にするか共同行使にするか、現行法でも選択できます。一方、法案が通って、DVや児童虐待などで対立関係にある父母に共同親権が強制されればどうなるでしょう。それが子どもの幸せにつながるでしょうか。

現行法下での親権の共同行使の合意すらできない父母に、法改正をして共同行使を命じても、うまくはいきません。DVや虐待のあるケースでは、加害者が『子の日常行為についてゴーサインを与えること』を支配の手段として利用することが懸念されます。

改正案の共同親権制度は、DV等で関係がこじれて別れた人たちを含んで推進されてきたもの。物事を相談しあえる父母には、必要のない制度です」

現行法でも面会可「共同親権で別れた子に会える」は嘘

推進派には「子どもに会いたい」「配偶者に連れ去られた」と主張する人も目立つが、はたして共同親権の導入で子どもとの面会が実現するのか? 岡村弁護士はこう語る。

「『共同親権で子どもに会えるようになる』はミスリード。面会と親権は関係ありません。

面会交流には民法766条という規定がすでに存在します。当事者間で協議できない場合は、家庭裁判所に申し立てをすればよいのです。面会による子への危険性がなく、養育費も適切に支払われていると判断されるなど、子の最善の利益にかなうとされれば、審判で面会が命じられます。

つまり日本の現行法は、面会交流について非合意型の審判制度を認めています。また親権という子に関する決定に関わる規律については、父母双方の合意がある場合にのみ共同行使を選べる。子の利益という観点から見てバランスのとれた法制度だといえるでしょう」