大ヒットアニメに共通する2つの項目

そんな韓国発作品のアニメ化を引き受けたのがAniplexで、『ソードアート・オンライン』で名高いA-1 Picturesが制作にあたっただけにアクションバトルとしての演出の質の高さや澤野弘之のOST(劇伴)に対する海外ファンの高評価も目立った。

最弱といわれた主人公が悲劇をこえて、唯一「ゲームのアルゴリズムが見えるユーザー」となってどんどんレベルアップしつづける。「俺TUEEE」(格下を蹴散らして勝ち誇るネットスラング)型の物語で、“物語に説得力があるわけではない”という言葉も散見されながら、視覚的スペクタクルと爽快感を与えることに成功している。

MALでは“If you want to turn your brain off and have fun, this is one for you.(頭からっぽにしてみるなら、これはいい作品だ!)”と揶揄ともとれる高評価もついている。

結局のところアニメとは練りこまれたキャラクター設定やストーリーの深さではなく、「わかりやすさとカタルシスを得られる設定、そしてアニメとしての質の高い演出力」が一番大事なのだ。

『ジャンプ』一強時代に風穴を開けた

欧米ユーザーからみてもこうした「異世界転生・なろう系(厳密には違うが隣接ジャンルとして)」へのキャラ設定・ストーリー展開の単純さへの疑問はいろいろ呈されていながら、「A-1 Picturesとこの作品が出会ったことが運命であった」というコメントに今回の成果は集約される。

都市型ファンタジー作品として『ソードアート』という成功事例をすでにもっているアニメ制作会社が韓国作品「俺レべ」で日本アニメマーケットでも最高の成果を出すことは、日韓連携での世界展開という点でも金字塔であった。

本当の成果は今後のシリーズ展開、商品化展開に大きく依存するが、まず1作目として集英社・少年ジャンプ作品が一強となってきていた(ある意味マンネリ化ともいえる)近年のアニメ作品集のなかに新しい風穴を開けた一作といえるだろう。

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