「僕も5年後くらいに治療しようと思った」

この治療の際に入れる白内障用の多焦点眼内レンズは30年以上前からあって、今では30種類以上が研究開発されているという。多くは遠・中・近の3焦点で、最先端のレンズはほとんどの距離にピントが合う5焦点のもの。遠方から手前まで見え方がなだらかで、理想に近いそうだ。

「昔と違って、高齢でもアクティブに活動する方が多くなってきて、メガネなしで遠くも近くも見たいというシニアが増えています。5焦点レンズの白内障手術は、当クリニックでは主流で、術後の患者さんは裸眼でも見えづらい位置がほとんどなく快適で、世界が変わったとおっしゃいます」(北澤医師)

白内障でぼやけた視界がすっきり明るくなるのだから、見える世界は確実に変わるだろう。僕も5年後くらいに治療しようと思ったので、手術はどのように行われるのかを聞いた。

手術は10分程度で終了、翌々日からデスクワークも可能

「老眼の治療で使うICLは、レンズを虹彩と水晶体の間に入れるだけなので、麻酔の目薬の使用を含めて基本的に10分程度で終わります。術後に眼の充血や炎症がありますが、1週間ほどですっきり見えるようになります。手術翌日は仕事を休んでもらい、2日目からはデスクワークは可能。術後の感染防止のため、スポーツや日常生活の制限などは担当医師に確認して指示を守ることが大事です。

白内障の場合は、水晶体をレーザーできれいに分割して取り出し、そこに多焦点の眼内レンズを入れます。ICLと違い片眼ずつの手術になり、当日は眼帯を装着。翌日にもう片方の眼の手術をします。所要時間はレーザーを使っても5~10分程度。やはり充血や炎症はあり、2~3日は違和感が残る場合もありますし、人によっては腫れぼったく感じることもあります」(北澤医師)

北澤医師が研修医だった30年前だと、白内障手術にかかる時間は30分くらいで、また、当時の眼内レンズは術後に乱視が現れるのも当然だったそうだ。

現在、国内の白内障手術は年間約100万件で、約9割が保険診療。5焦点レンズだと自費で高額にもなるが、レンズは個々に合わせて製作される。眼の老化にまつわる技術の進化はヤバい。一生メガネを使わずに過ごすことだって可能なのだ。