ホモソーシャルな組織文化を守りたい人々

【上野】企業は経済合理性を追求するものだと考えればそうなるはずです。なのに、企業はすでに女性は使えるとわかっているし、女性が入ると利益率が上がるといった実証データも出ているのに、ほとんど変わっていません。

上野千鶴子『こんな世の中に誰がした?』(光文社)
上野千鶴子『こんな世の中に誰がした?』(光文社)

だから、企業の中堅以上の方々に私の仮説を投げてみたんです。「企業は経済合理性を差し置いてでも、ホモソーシャルな組織文化を守りたいと思っているのでしょうか」って。そうしたら、ほとんどの方がイエスとお答えになりました(笑)。

【海老原】経済合理性というよりも「背に腹を代えられなくなる」と変わり始めるんじゃないでしょうか。近年はまさにそうした状況になっているから、既得権益を差し置いてでも変化に取り組まざるを得なくなった。微々たる変化かもしれませんが、これはやはり今の40代女性たちが頑張ってくれた成果であり、かなりの果実ではないかと思っています。

【上野】その果実の代償として、女性はたくさんのツケを払わされてきました。それにしては変化のスピードが遅すぎますね。私はいつも「背に腹を代えられなくなってからでは手遅れになる」と警告しているんですが。

変わるべきは企業と男性

【海老原】変化のスピードが遅い理由として、今の40代女性が声を上げてこなかったからだなんて不届きなことをいう人もいますが、その点はどう思われますか?

海老原嗣生『少子化 女“性”たちの言葉なき主張』(プレジデント社)
海老原嗣生『少子化 女“性”たちの言葉なき主張』(プレジデント社)

【上野】声はしっかり上げていますよ。企業と男性が聞く耳を持たなかっただけです。たとえば、なぜ女性管理職が増えないのかという話題になると、すぐ「女性自身が望まないから」「女性の意識が低いから」という意見が出てきますが、それは男性の上司が女性の意欲をくじいてきたからです。また管理職の長時間労働が女性の昇進の最大の壁であることもデータからはっきりしています。女性の意識が低いなどと言い出す時点で、上司のマネジメントの失敗を証明するようなものです。今の時代、女性はもう十分に意欲も能力も高いし、意識も変わっています。変わるべきは女性ではなく、企業と男性のほうです。

【海老原】企業は、そうした意識変革に加えて年功給からも脱却すべきですね。現状の日本では、ヒラ社員でも年齢とともに給料が上がりますが、これでは男性は50代になるまで昇給昇進の可能性をあきらめきれず、家庭重視の決断をしにくい。結果、女性の家事育児負担が一向に減らないことになる。

【上野】そうですね。年功給も既得権益者は男性ですから、海老原さんから彼らに変化を促してください。女性には意思決定権がありませんから、職場のルールを変えられません。