東京都台東区上野には日本最大の宝飾問屋街がある。銀座や青山などの一等地ではなく、なぜ上野にジュエリーショップが集まったのか。ライターの本橋信宏さんによる『上野アンダーグラウンド』(新潮文庫)から、一部を紹介する――。
*本文中の年齢、肩書きなどは、一部をのぞき取材時のものです。
日本最大の宝飾問屋街ができた経緯
かつてのスラム街のすぐ近くに、黄金色に光り輝く街がある。JR御徒町駅から秋葉原方面の高架線に沿ったエリア、住所でいうと上野五丁目には宝飾関係の店が営業中だ。
日本最大の宝飾問屋街・上野御徒町ジュエリータウン・上野ダイヤモンド街――。
きらめく呼称がつけられているこのエリアには、「ジュエリー」「プラチナ」「ダイヤモンド」「ネックレス」といったカタカナ書きの看板が至る所に建ち並び、激安チケット売り場のようなチープ感が漂う。
ショーケースには、七色に輝く宝石類が飾られて、店内にいる女性販売員の多くが中年である。日本の宝石関係のショップ・卸・メーカーの8割がこの上野・御徒町宝石街に集まる。その数ざっと2000店舗。
近くの街には、下谷万年町があった北上野やキムチ横丁がある。上野は富む者と富まざる者が背中合わせに生きてきた。
ところでなぜ銀座・赤坂・青山といった一等地ではなく、上野・御徒町が宝飾の聖地となったのだろうか。歴史をひもとくと、江戸時代に源流があった。