ドラマを飛び出した「ピラミッドゲーム」

そんな人気を集めたドラマだったが、意外なところから問題が指摘された。一部の学校で生徒たちがドラマを真似しながら遊びを装ったいじめが広がっているというのだ。

韓国南西部に位置する全羅北道の教育庁では、3月21日から道内778の小・中・高校に「ピラミッドゲーム」拡散防止を呼びかける生徒生活指導および保護者宛の家庭通信を配布した。「ピラミッドゲーム拡散防止のための案内」と題された家庭通信には「最近TVINGで公開されたドラマ『ピラミッドゲーム』をまねて遊びを装ったいじめが学校に広がっている」と書かれている。生徒たちの投票でいじめの対象者を選び校内暴力を加えるというドラマの設定が、実際に校内で拡散する恐れがあるというのだ。

教育庁関係者は「ピラミッドゲームのような状況が実際に一部学校に起きていると聞くようになった。特定の生徒を対象に実質的ないじめを与える深刻な学校暴力を量産する可能性が高い状況だ。(ドラマを真似る)遊びから犯罪にならないよう保護者の皆様の積極的な関心と指導をお願いする」と話している。

制作者の意図は?

こういった状況について、ドラマの創り手はどう考えているのか?

『ピラミッドゲーム』を担当したパク・ソヨン監督は「今回の作品を通じて学校暴力の深刻性を知らせたかった。ドラマの中でピラミッドゲームが生まれたきっかけは無意識と無関心であり、こういったゲームをする子供たちを放置する大人たちこそ、無意識と無関心でピラミッドゲームを作ったといえる」と演出意図を語っている。

一方で、教育現場で問題視されたことに対しては、「生徒たち自らがゲームを終わらせる過程を見せることで学校暴力の深刻性を知らせようとしたが、このような(現実への悪影響の)話を聞いて気が気ではなかった。(制作するうえでは)暴力を正当化しないことを最も重要な原則とした」と強調した。

確かにドラマで描かれるいじめや校内暴力のエピソードは社会的な関心を呼び起こし警戒心を高めるという側面もあるが、一方では過度に刺激的な要素が盛り込まれることで模倣犯罪を呼び起こす可能性も否定できない。いじめの被害者たちがまた別の被害に遭わないように、または助けを受けられる手段はないのか。ドラマが社会的な問題を扱う場合は、単に物語を完結させるだけではない配慮も求められるのではないだろうか。

当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら
【関連記事】
「精神科医が見ればすぐにわかる」"毒親"ぶりが表れる診察室での"ある様子"【2021下半期BEST5】
「ちゃんと日本語喋って!」人気者だと思っていた娘は加害者だった…子どもが事件を起こす家庭の意外な共通点
中学生の息子の「クソババア」にカーッとなって「出ていけ!」と言いそうになったときに踏みとどまる方法
「いい子ぶってると思われたくない」とボランティアをためらう中学生を動かした"校長先生のお話"の意外な内容
宝塚歌劇団は「パワハラが当たり前の世界」…熱狂的ファンが通い詰めるタカラヅカの"本当の姿"