人格攻撃は名誉毀損、侮辱罪に問われる
名誉毀損行為と並び、SNSで多発しているのが侮辱行為だ。侮辱罪は刑法231条で次のように定義されている。
名誉毀損では「公然と事実を摘示(提示)」することがアウト。かたや侮辱は「公然と人を侮辱」することがアウトだ。つまり、個人的な意見や感想であっても、またそれが抽象的な表現であっても、度を越えた悪口は侮辱として責任を問われる。
議論が白熱していたとする。
「あなたの主張のここは大間違いだ」これは単なる意見だ。問題ない。
「おまえは三流大卒だから、そういう考えしかできないんだ」これは明らかな人格攻撃だ。侮辱だ。罪に問われる可能性がある。
どんな言葉なら表現の自由の範疇なのか。一方、どんな言葉なら侮辱に該当するのか。そこに実は明確な定義はない。その発言がなされた状況や経緯、特に多くの人がどのように読みとって感じるのかを基準とした解釈にゆだねられる。
「学者バカ」はセーフ、「バカ学者」はアウト
法律家のあいだで一例としてよく用いられるのが、「学者バカ」は許されるが、「バカ学者」は許されないという基準だ。
「学者バカ」からは、研究に没頭するあまり世間のことに疎い人、というニュアンスが汲み取れる。どちらかと言えば、それは好意的なニュアンスだろう。
「バカ学者」からは、好意的なニュアンスがいっさい汲み取れない。まさに侮辱である。
「ほんとにあいつはアホだな~」
とあなたが知人を評したとする。この場合はどうだろうか。侮辱に相当するだろうか。前後の文脈から、その発言に親愛やリスペクトを汲み取れるなら、表現の自由の範疇だろう。でも、そうでないなら侮辱にあたる。
またその発言をしたときの口調も判断要素のひとつになりうる。和やかな口ぶりなら好意的表現と見なせるし、吐き捨てれば侮辱的表現だろう。
侮辱かどうかの見極めには、繊細な解釈がからむ。でも難しい話ではない。要するに、いたずらに相手の人格を否定するのは許されないということだ。ただし、許されないのはあくまで人格の否定である。意見を戦わせるぶんにはなんの問題もない。
率直な意見をぶつけ合い、成熟した議論をまっとうする。そのことをつねに心がけたい。