服部良一が昭和22年に仕掛けたことが令和に訴えかけてきた

【佐藤】ドキドキは恋をしているような感じだけれど、ズキズキというのは痛みを伴っているわけですよね。でも、それをワクワクに変えてくれるのがブギウギのリズムなんだと……。服部良一さんが昭和22年に音楽に仕掛けたことが、このドラマで再現されて、だから「東京ブギウギ」という曲はいいんですよと、みんなが理解できる流れになっていました。

【足立】そうなっていると、本当にいいんですけど。

【佐藤】ズキズキワクワクというのが、当時、最愛の人を亡くし、シングルマザーとして生きていく決意をした笠置さんにとってはダブルミーニングになっているんですよね。

【足立】やはり「ズキズキ」の部分をしっかり描かないとダメだろうなとは思っていました。笠置さんの人生では、大切な人がどんどん亡くなっていくので、その亡くなる衝撃だけでズキズキになるのではなく、人生はなかなか思い通りにいかないということ、周りの人間関係など「雑音」みたいなものまで描きたいなと……。

「ヘイヘイブギー」は笠置から娘へのラブソングだった?

【佐藤】そこが共感できるポイントでした。「東京ブギウギ」のズキズキワクワクというのが痛みを伴ったものだとすれば、終盤初めてフルコーラスで歌った「ヘイヘイブキー」は、あなたが笑えば私も笑うという共感に変わる。スズ子にとっては、娘の愛子が笑えば私も……という。

【足立】「ヘイヘイブギー」は、子守歌としてしか出してこなかったですからね。終盤の展開で、若手歌手が出てきた時に対抗する歌を「ヘイヘイブギー」にしようとは決めてなかった気がするんですよ。スズ子の人生を書いていくうちに「今は子育てのことだ」と積み重ねてきたので、愛子のために何かを歌う展開にしたい。それなら歌詞からして「ヘイヘイブギー」がいいんじゃないかという話になった。

【佐藤】笠置さんの最後のTV出演となった第7回紅白歌合戦、大トリで歌った曲が「ヘイヘイブギー」なんです。その史実とドラマの展開がぴたっと合ったのを見て、鳥肌が立ちました。その歌合戦でスズ子の「ラッパと娘」を歌った水城あゆみというキャラクターは、美空ひばりさんであり江利チエミさんでもあるという……?

【足立】そうですね。史実でもいろいろあったわけですが、でも、自分の持ち歌、しかも代表曲を歌いたいんだと、若手の有望株から言われた時のスズ子というのは、描きがいがあるなと思ったんです。