※本稿は、平野薫『なぜコンビニでお金をおろさない人はお金持ちになれないのか?』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。
花屋さんは仕入れた花の3~4割を廃棄している
駅の改札を出ると花屋さんが色とりどりの花を並べており、都会の喧騒の中でひと時の癒やしを与えてくれます。それほど花に造詣が深くない私でも季節に応じて変化する花を眺めていると、たまには妻に花でも買って帰ろうかと豊かな心が芽生えます。
しかし、そんな美しいものにうっとりする間もなく考えてしまうのは、花屋さんの経営状況です。実もの、葉もの、枝もの、球根類を除けば花屋さんで売っている花は短命です。しっかり前処理をし、低温輸送して管理しても切り花の寿命は10日程度。産地から市場経由で花屋さんに入るのに1日、鮮度や商品価値を保つための水揚げ作業をして店頭に並ぶまでが1日とすると、店頭に並んだ時点で残った寿命は8日程度。更にお客さんが花を買ってすぐに萎れてしまっては花を楽しめないので、花屋さんとしては店頭に並べてから3~4日で販売する必要があります。
売れ残った分は花束やブーケとして販売することもありますが、大部分は廃棄されます。花屋さんの廃棄は仕入の3~4割にもなり、フードロスならぬフラワーロスといわれ、SDGsの視点からも問題になるほどの量となっています。
店頭の品揃えが売れ行きを左右する
それにしても、花屋さんはどうしてそれほどの廃棄を覚悟で大量に仕入をするのでしょうか?
その理由は2つあります。
1つは、品揃えが売れ行きに影響を及ぼすからです。大抵の場合、花を買いに行く際には花屋さんの店頭にある在庫から商品を選びそのまま持ち帰ります。当然ですが、店頭の品揃えが豊富な方が選択肢も増えるためお客さんに購入してもらえる可能性が高まります。
また花屋さんの品揃えの良さは集客という観点でも重要です。在庫が少なく、種類も少ない貧相な花屋さんを見ても購買意欲は高まりませんし、足を止めることもありません。一方で色とりどりの花が並んでいる花屋さんの前ではお客さんとしても足を止める可能性が高く、ちょっと花でも買っていこうかなという気になってくれます。花屋さんにとって、店頭の品揃えこそがショールームであり、プロモーションになっているわけです。