人手を必要とする場合は、インセンティブ制で人件費を抑える

低コストではじめられるスモールビジネスとは、モノではなくコトを売るビジネスです。ここでいう「コト」には、知識や経験、時間が当てはまります。ノウハウを売るのもいいでしょう。

意識してほしいのは、コピーしやすいものを選ぶということです。ですが、ノウハウを売るといっても、何十年も修行しなければ身に着かないような、属人的なノウハウを売るのは非効率的です。

天才コックにしかできない料理、ベテランマッサージ師の施術、職人気質の大工の仕事……いずれも魅力的に聞こえますが、これらは属人的なノウハウに依存しています。

日本人はそういった職人芸を好みますし、それはそれで素晴らしいのですが、私がお勧めするスモールビジネスには向きません。そうではなく、もっとコピーしやすいものを目指してください。

たとえば今なら、需要が増加中のAIの使い方や教育方法を売るのもよさそうです。

実際、私もAIを使うビジネスに取り組みはじめました。AIに詳しくない顧客に、AIソフトウェアを使いこなすノウハウを販売するビジネスです。

それ以外にも、AIを使って建築物などの立体表現に欠かせないパース制作のビジネスも視野に入れています。人力でやるとかなりのコストがかかりますが、AIならば格段に低いコストで済みます。

AIの利活用に関しては、中国のほうが日本よりも数段進んでいる印象があります。

中国を視察し、差別化ポイント発見のヒントにしようと画策しています。

それから、人をあまり必要としないビジネスであることもポイントです。たとえば、無人のコインランドリー、ジム、ワーキングスペースなどです。

ワーキングスペースのイメージ
写真=iStock.com/JGalione
※写真はイメージです

人手を必要とする場合は、固定給で雇用するのではなく、インセンティブ制にするなど、人件費を抑えるようにしてください。社員を募集するのではなく、「パートナーを募集する」イメージです。

起業は「徹底コピーの法則」でしか勝てない

「知的財産権」というものがあります。これは法的に保護される知的な創造物のことで、ビジネスシーンでも非常に重要な概念です。

「産業財産権」とも呼ばれる特許権、実用新案権、意匠権、商標権は、しっかりと守らなければいけません。つまり、マネをしてはいけないということです。

ですが、一つだけ、とても重要であるにもかかわらず、マネが許されているものがあります。それが、ビジネスモデルです。ビジネスモデルには知的財産権による独占が認められていないのです。

ビジネスモデル特許というものがありますが、それは「ビジネスの仕組み自体」への独占権ではなく「それを実施する際の技術的な工夫」への独占権です。まぎらわしいですが、アナログなビジネスの仕組み自体は模倣が許されているのです。

ですから、ビジネスをはじめるときには、必ず、先行した成功事例のマネからはじめるべきです。

ゼロからの発想は危険です。すばらしいアイデアなら、他の誰かがトライしているに違いないからです。誰もやっていないなら、やらないだけの理由があるのです。

残念ですが、あなたも私もスティーブ・ジョブズではありません。ジャック・マーでもありません。でも、本書はジョブズやマーではなくても成功できるビジネスを説く本ですから、心配しないでください。

もし、あなたがぼんやりと考えているビジネスモデルに近いものが同じ業界内にないならば、それは、そのビジネスが上手くいかないなんらかの理由がある可能性が濃厚です。その可能性を明らかにしない限り、チャレンジすべきではないでしょう。

また、あなたが考えていることに近い形の成功したビジネスがすでにあっても、それが潤沢な資金や大きな組織の力がバックホーンにある場合は、やはりマネするべきではありません。あなたは小さなビジネスをはじめるのですから。

起業はマネからはじまります。ビジネスモデルは知的財産として保護されないのですから、マネしない手はありません! むしろ、マネしないのは危険です。それは自信過剰ですよ!

ミニマム・イグジットを目指すビジネスはマネからはじめるべきですが、その「仕組み」が正確に把握できないこともあります。それは、外から眺めているだけではわからないケースです。