新NISAが話題だ。経営コンサルタントの鈴木貴博さんは「新NISAで重要なのはゴールの金額を決めておくことだ。その時に参考になる『数字』がある」という――。
株価チャートを指さす人の手元
写真=iStock.com/tadamichi
※写真はイメージです

日本の半分の世帯では「老後10年」で資金が尽きる

新NISAが話題です。とりあえず始めてみた方から、どうしようか迷っていらっしゃる方まで、読者の皆さんも状況は様々だと思います。そもそも新NISAがここまで話題になっているのはなぜでしょうか? この記事では新NISAが話題を集めている理由を3つの切り口からわかりやすく解説します。

話題の理由1:新NISAが老後2000万円問題への解決になるから

政府が新NISAを決めた大きな背景のひとつに「老後2000万円問題」があります。この老後2000万円問題ですが、その意味が意外と知られていないので、あらためて解説させていただきます。

簡単にいえば「仕事がない高齢者夫婦の年金生活では月5.5万円が不足する」という政府による試算結果が発端です。他に収入がない以上、不足する分は貯金を切り崩して生活することになります。月5.5万円の切り崩しが30年間続くと合計で1980万円になります。これが「老後には2000万円の資産が必要だ」という話のもともとの根拠です。

ところが大半の世帯はそんなにお金を持っていません。60歳代の金融資産についての調査では世帯あたりの金融資産の中央値は650万円です。つまり日本全体の半分の世帯では月5.5万円ずつ切り崩していくと10年で資金が尽きてしまうのです。

新NISAは老後資金をつくる手段である

国民の過半数が不十分な資産しか持てていない最大の理由が、日本人が貯金ばかりしてきたからです。バブル後の時代までは預金金利は高かったのです。1988年から1992年頃のデータをみると郵便貯金の定期貯金金利が一年定期で3.39%~6.08%と今では信じられないほど高い金利がついていました。

つまり昔は銀行や郵便局に預けた金融資産は増えていったのですが、今はそんな時代ではありません。金利はほぼゼロなのになぜか国民は惰性的に銀行預金を続けています。それを「預金から投資へ」という新しい流れを作ることで変えていこうということから新NISA制度が設計されました。

ですから最初に知っておくべきことは、大半の読者にとっては「新NISAはご自分の老後資金をつくる唯一の手段なのだ」ということです。貯金に頼っていては安心できる老後はやってこないのです。