行為者の言い分を十二分に聞く

「カウンセリングでは何を話すのか」。これは多くの方の関心のあることかと思いますが、私が行為者に話しているのは、このプロセスの一部分(=「パワハラ行為者との面談」)でのことに過ぎません。

また、パワハラ行為者との面談では、8割方の時間、(私ではなく)行為者が話をしており、私は順に質問をしていく程度で、ほとんど聞き役に徹しています。

「今日はカウンセラーの私と面談ですが、何が目的かわかっていますか」
「ご自分では、パワハラをしているという自覚はありますか」
「パワハラをしているとすれば、なぜそうなるのですか」
「やっていないとすれば、なぜそういうクレームをされていると思いますか」
「被害者だと訴えている相手について、どう思っていますか」

このような質問を投げかけ、本人の考えや言い分を十二分に聞きます。

行為者の会社生活の様子も含め、他にも尋ねる質問は数多くありますが、私が行為者に「何が正しくて、何が正しくないか」「行為者の言動の何が問題なのか」といったことを説くわけではありません。

耳を傾ける
写真=iStock.com/nicolas_
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面談は1日6時間

面談は長ければ、1日6時間ほど続けます。相当に長い時間に感じると思いますが、(当初は私自身がそう感じていましたが、)経験上、このくらい時間をかけるほうが効果的なことが多いのを知っているからです。

この間、私は徹底的に話を聞きます。

私は行為者の主張を否定することはありませんが、必要以上に肯定することも、わざとらしく行為者に寄り添うように振舞うこともありません。

私はただ、行為者の伝えたいことを正確に把握しようと努めます。

面談の目的は、必ずしも行為者の考えや気持ちを理解することではないのですが、それをすることなくして、行為者は(後述する)カウンセラーの私からのアドバイスを受け入れようとはしないからです。

面談で大事なのは、今後もパワハラ行為を続けるのは、本人にとっても得にならず、振舞い方を変える必要がある――このことを理解し、自覚してもらうことです。

面談の終わりには、本人にパワハラ行為をしないように努めると言ってもらいます。

私が説得してそう言わせるのではありません。それが自分にとって大事なことだと理解できれば、本人からそう話すものなのです。